5,000ドルが押し目と考えるのは「お年玉が毎月もらえると思っている子ども」と同じだ。
S&P500は2025年4月8日、約1年ぶりに5,000ドルを下回った。
一部では「押し目買いのチャンス」と捉える声も出ているようだ。
ブルームバーグによれば、ゴールドマン・サックスのジョン・フラッド氏は「長期投資家が再び買い始める水準」と見ているのだとか。
しかし、この5,000ドルを「押し目」とする判断は冷静ではない。それどころか「まったく現実を見ていない」とすら言える。
コロナ前の水準を基準にすべき

まず事実として、コロナショック前のS&P500は3400ドル以下だった。
そこからコロナ後に急上昇し、5,000ドルを超える水準に達している(上画像参照)。
ここ5年で約1500ドル上げたわけだが、特に好材料があったとは思えない。アメリカもヨーロッパも日本も、景気は良くなっていない(むしろ悪化している)。
いつの間に「株価と景気は相関しない関係性」へと移行したのか?
もし、今の状況が当たり前だと思っているなら、自分の相場感覚が「マヒ」していることを疑った方がいい。
コロナショック後に「謎の上昇」が続いた理由
S&P500は、コロナショックによってガクンと下がった後、「なぜか」上がり続けた。
その背景には、実体経済の回復というよりも、異常な金融政策による株価の膨張がある。
- ゼロ金利
- 量的緩和による市場への資金供給
- 大規模な財政出動
これらが複合的に作用し、株式市場全体を押し上げた。
この5年間の上昇は、企業価値の伸びによるものではなく、金融マジックによる、見かけの上昇と見るべきだ。
つまり、「ボーナス期間」のようなものだったと捉えたほうが現実に近い。
すでに「ボーナス期間」は終了
現在のアメリカをはじめとする経済の状況を見れば、かつての金融緩和的条件は失われていることが分かる。
- FRBは利下げに対する慎重姿勢を崩していない
- 実質金利は高止まりしており、資金調達コストは上昇している
- インフレは依然として目標を上回って推移している
企業の利益成長率も鈍化しているし、(手品の種であるところの)自社株買いも減少傾向にある。
それなのに、バリュエーションは依然として高い。市場の健全性には疑問が残っている。
勘違いした子ども
この「現実」を見ても、まだ「S&Pは5,000が押し目」だと思うだろうか?
「今が買い時」と思っているなら、そうすればいい。私は止めない。
ただ、私には彼らが「お年玉が毎月もらえると勘違いした子ども」に見えてならない。
いうまでもなく、お年玉がもらえるのは「年に1度だけ」だ。なぜそれが株式市場では「例外」だと思ってしまうのか、理解に苦しむ。
4000ドルを割り込む可能性は高い
現在のS&P500は、ファンダメンタルズとの乖離が大きい。
短期的には需給で持ちこたえる場面もあるだろうが、中長期的には調整は避けられない。
S&P500は4000ドルを割る可能性が高いと考える。
仮に景気後退やテックセクターの調整が進めば、3500ドル台への下落も十分あり得る。
この水準は決して「暴落」ではなく、実体に近づくための正常な動きである。
結論
今の5000ドルという水準を押し目と判断するのは、過去数年の特殊な環境を前提にしているからに過ぎない。
金融政策は転換し、インフレと金利の構造も変わった。
過去のボーナス相場を「当然」とみなす発想自体を見直すべき時期に来ている。
市場が冷静さを取り戻すなら、S&P500の適正水準は4000ドルを大きく下回る可能性が高い。