AliExpressやTEMUで激安ショッピングが身近なものになっています。
「関税?自分には関係ない」と思いがちですが、今後は日本の一般消費者にも影響が及ぶ可能性が高いです。その理由を、わかりやすく整理します。
中華系激安ECサイトの関税は?

私たちが関税と密接に関わっている例として、中華系激安ショッピングサイトでの買い物や、海外旅行のお土産などがあります。
特にAliExpress(アリエクスプレス)やTEMU(ティームー)のようなサイトを利用する際には、関税について知っておくことが大切です。
アリエクやtemuは現在「ほぼ関税なし」
原則として、日本に輸入される物品はその原産地に関わらず、関税と消費税の課税対象となります。
これは、AliexpressやTemuといった中国系のECサイトを通じて個人で購入した商品も例外ではありません。
しかし、現在の日本では少額の輸入品については、関税と消費税が免除される制度が存在します。
多くの場合、AliExpressやTEMUで購入される商品は、この免税範囲内に収まるか、あるいは「少額申告」として処理されることが多いため、購入者が実際に関税を請求されるケースは少ないのが実情です。
アリエクやtemuに関税がかからない理由
日本の個人輸入における関税・消費税の免税点は、「課税価格(商品価格のおおむね60%)が1万円以下」の場合です。これは、商品価格に換算すると「1万6666円(税込)以下」に相当します。
TEMUやAliExpressはこの「1万6666円」というラインを意識したビジネスモデルを展開しています。商品を小口に分け、低価格で販売し、多くの場合送料無料で提供することで、利用者が追加の関税や消費税を支払うケースを最小限に抑えているのです。
ただし、注意点もあります。革製品、ニット製品(Tシャツなど)、ハンドバッグ、靴などの特定の品目は、この少額免税の対象外となります。
これらの品物を購入した場合、たとえ価格が1万6666円以下であっても関税がかかる可能性があります。この場合、配送業者(通関業者)が関税を立て替えて支払い、荷物の受け取り時に購入者へ請求するのが一般的です。
145%の関税!?今後はどう変わる?

現在、特に注目されているのが、アメリカと中国の間の貿易摩擦と、それが日本の消費者にもたらす可能性のある影響です。
一部報道では、アメリカが中国からの輸入品に対して100%を超える、例えば125%や145%といった非常に高い関税を課す可能性が指摘されています。
もしこのような高関税が本当に実現すれば、世界的な貿易の流れは大きく変わり、日本における中国製品の価格にも大きな影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。
現在のアメリカ・中国間の少額免税ルール
AliExpressやTEMUは、日本だけでなくアメリカでも非常に人気があります。
現在のアメリカでは、「de minimis(デミニミス)」と呼ばれる少額免税ルールがあり、800ドル以下の輸入品には関税が課されていません。
このルールのおかげで、AliExpressやTEMUのような中華系ECサイトから低価格の商品を関税なしで個人輸入することが可能になっています。
中国からアメリカの輸入が「停止」する?
しかし、この状況は変化する可能性があります。アメリカ政府が中国製品に対して100%以上の高関税を課すことを決定した場合、これらのプラットフォームで販売されている商品の価格は大幅に上昇することになります。
さらに重要な動きとして、2025年5月2日からアメリカの「de minimis」ルールによる免税措置が特定の貨物に対して適用されなくなる予定です。
これにより、これまで免税だった800ドル以下の小包にも関税が課されることになります。特に低価格戦略を軸とするAliExpressやTEMUにとって、この少額免税ルールの廃止は大きな打撃となり、商品価格の上昇は避けられないでしょう。
状況によっては、中国からアメリカへの輸出が事実上「停止」するレベルにまで落ち込む可能性も指摘されています。
関税についての基礎知識

ここで、そもそも「関税」とは何なのか、基本的な知識をおさらいしておきましょう。
何に、いつかかって、誰がどれくらい、どこに支払うものなのでしょうか。
What:どんな品物に
関税は、海外から日本へ輸入される「モノ」に対して課される税金です。
これは、企業が商業目的で輸入する商品だけでなく、個人が自分で使うために輸入する商品も対象となります。衣類、鞄、靴、食品などが特に関税の対象となりやすい品目です。
ただし、例外もあります。課税価格(商品価格のおおむね60%に相当する金額、送料や保険料は含まない)が1万円以下の場合は、原則として関税と消費税が免除されます(一部品目を除く)。
When:関税がかかるタイミングはいつ?
関税は、輸入される品物が日本の「税関」を通過する際(通関時)にかかります。
個人輸入、インターネット通販での購入、海外旅行者が持ち帰るお土産など、どのような形であっても、輸入されるモノが免税範囲を超えれば課税対象となります。商業用か個人使用かは問いません。
具体的には、以下のタイミングで関税の支払い義務が発生します。
- 保税地域から貨物を引き取るとき: 企業などが大量に輸入する場合など。
- 海外通販の場合: 荷物を受け取る際に、配送業者(郵便局やクーリエ)から請求されるのが一般的です。
- 課税価格が一定額を超える場合: 上記の免税範囲を超えた場合。
ネット通販(AliExpressやTEMUなど)での購入や、旅行のお土産であっても、免税範囲を超えれば課税対象となることを覚えておきましょう。
Who:誰が関税を払う?
関税を支払う義務があるのは、原則としてその商品を輸入する人(購入者)です。
ただし、AliExpressやTEMUのようなECサイトを利用する場合、サイト側や物流業者が関税の計算や手続きを代行し、場合によっては販売価格に関税相当額を含めているケースや、配送業者が一時的に立て替えているケースが多く見られます。
TEMU・AliExpressでよく見かける品の税率(簡易税率)
課税価格が20万円以下の商業輸入品や個人輸入には、「簡易税率」という簡略化された税率が適用されることがあります。
これは、商品をいくつかのカテゴリーに分類し、それぞれに定められた税率で計算する方法です。
TEMUやAliExpressが利用する物流ルートでは、この簡易税率と個人輸入の免税枠を組み合わせることで、購入者の実際の関税負担を抑えていると考えられます。
How much:どのくらい
日本の関税率は、品目によって細かく定められており、一律ではありません。
複数の関税率制度(国定税率、協定税率、特恵税率、暫定税率など)があり、どの税率が適用されるかは、品物や原産国によって異なります。
例えば、一般的な税率の目安としては、
- 靴:30%前後、または1足あたり4,300円の高い方
- Tシャツなどのニット製衣類:10%程度
- パソコンやその部品:多くの場合、無税
など、品目によって税率が大きく異なります。詳細な税率は税関のウェブサイトなどで確認できます。
関税が関係する・これから関係しそうな人は?

関税は、特定の人だけに関係するものではありません。特に近年、海外との取引が身近になるにつれて、多くの人に関わる可能性があります。
すでに関税が関係している人
海外通販(AliExpress、TEMU、Sheinなど)を頻繁に使っている人: 少額免税の範囲内での利用が多いかもしれませんが、購入金額や品目によってはすでに関税を意識する必要がある人々です。
メルカリ等で並行輸入品を扱う人: 海外から仕入れた商品を国内で販売する場合、仕入れ時に関税がかかっている可能性があります。
中小企業で海外仕入れ(特に中国)を行っている事業者: ビジネスとして輸入を行う場合、関税はコスト計算に不可欠な要素です。
これから関税が関係してくる(可能性が高い)人
物価高で「安さ」を求めて海外サイトを使い始める人: 国内製品の値上がりを受けて、より安価な海外製品を求める動きが加速すれば、関税に直面する機会が増えるでしょう。
日本のECでも越境販売が一般化する流れに乗る人: 日本のECサイトが海外販売を強化したり、海外のECプラットフォームに出店したりする動きが活発化すれば、輸出入に関わる関税ルールへの理解が求められます。
副業で「輸入転売」「個人輸入ビジネス」を始める人: 低リスクで始めやすいビジネスとして人気ですが、関税の知識は必須です。
ECサイトや物流の変化に影響を受ける倉庫業・小売業者: 国際的な物流の変化は、国内の関連事業者にも影響を与えます。
アメリカ・中国の関税が日本に与える影響は?

アメリカが中国製品に対して大幅な関税引き上げを実施した場合、日本が直接関税を上げるわけではなくても、間接的に様々な影響が出ると考えられます。
中国製品の値上がり
アメリカ市場での販売が難しくなった中国の製造業者が、利益を確保するために、日本を含む他の市場での製品価格を引き上げる可能性があります。
これまでAliExpressやTEMUなどで数百円で購入できていたようなスマホケース、靴、衣類、小型家電、美容グッズ、DIY工具、アクセサリーといった商品が、関税コストの上乗せによって1.5倍から2倍以上の価格になるリスクも考えられます。
特に、もともと関税率が高い靴やバッグなどは、値上がりが顕著になるかもしれません。
日本国内の価格競争の変化
逆に、アメリカ市場から締め出された中国製品が、日本市場へ大量に流入する可能性も考えられます。
供給量が増えれば、短期的には価格競争が激化し、一部の商品カテゴリーでは価格が下落するかもしれません。
しかし、このような状況が長期的に続くかは不透明であり、市場の混乱を招く可能性もあります。
サプライチェーンへの影響
米中間の関税問題は、企業が生産拠点を中国から他の国へ移転する動き(サプライチェーンの再編)を加速させる可能性があります。
日本は多くの製品カテゴリーで中国からの輸入品に大きく依存しているため、このようなサプライチェーンの変化は、製品の供給や価格に間接的な影響を与える可能性があります。
現在の中華ECサイトの強みは「送料込みでの圧倒的な安さ」です。もしここに関税や消費税が本格的に上乗せされるようになると、日本国内で製造・販売されている商品との価格差が縮まります。
そうなれば、消費者は再び国内製品を選ぶようになるかもしれませんが、それは消費者の選択肢が狭まることや、全体的な物価上昇につながる恐れもはらんでいます。
インフレ圧力
中国製品の価格上昇は、それらを部品や材料として利用している他の製品の価格にも影響し、最終的には日本の物価全体を押し上げる要因となり、インフレ圧力を高める可能性があります。
Amazon・楽天の価格や配送料はどうなる?

アメリカが中国に対して100%以上の関税を発動した場合、日本で人気のECサイトであるAmazonや楽天市場の価格や配送料にはどのような影響があるのでしょうか?
直接的な影響について断定はできませんが、いくつかの間接的な影響が考えられます。
中華製品の「更なる値下げ」が一時的に起こる?
前述の通り、アメリカ市場での販売が困難になった中国の出品者が、在庫処分や販路確保のために日本市場へ商品を大量に流し、一時的に価格競争が激化するシナリオが考えられます。
もし日本への輸出が増加した場合、Amazonや楽天に出品されている一部の中国製品の価格が短期的に下落する可能性はあります。
しかし、これは一時的な現象にとどまる可能性が高く、長期的には製造コストの変動、世界的な需要の変化、そしてプラットフォーム側の戦略によって価格は変動すると考えられます。
Amazonマーケットプレイスなどへの影響は?
Amazonマーケットプレイスには、多くの第三者出品者が存在し、その中には中国から直接商品を発送・販売している出品者も少なくありません。
これらの出品者がアメリカ市場での販売を縮小し、日本市場での販売に注力するようになれば、価格設定や販売戦略に変化が生じる可能性があります。
例えば、競争激化による値下げ圧力や、逆に日本市場での利益確保のための値上げといった動きも考えられます。
価格や配送料が具体的にどう変動するかは、個々の出品者の判断やAmazon、楽天といったプラットフォーム側のポリシーによって大きく左右されるでしょう。
サプライチェーンの根本的な変化
米中間の高関税問題は、世界的なサプライチェーン(原材料の調達から製造、物流、販売、消費に至る一連の流れ)に根本的な変化を促す可能性があります。
企業がリスク分散のために中国以外の国(例えば東南アジアやメキシコなど)に生産拠点を移す動きが加速すれば、Amazonや楽天で取り扱われる製品の原産国や調達ルートも変化します。
このサプライチェーンの変化は、製品価格だけでなく、国際輸送コストや配送リードタイムにも影響を与える可能性があります。
まとめ

AliExpressやTEMUといった中華系ECサイトの普及により、私たちは安価な商品を簡単に手に入れられるようになりました。
現在の日本の制度では、個人輸入の多くが少額免税の恩恵を受けていますが、革製品など一部対象外の品目も存在します。
今、注目すべきはアメリカと中国の貿易摩擦の行方です。
アメリカが中国製品に対して大幅な関税引き上げや、少額免税制度(de minimis)の適用除外といった措置を本格化させた場合、その影響は日本にも及ぶ可能性があります。
考えられる影響としては、
- 中国製品の値上がり: アメリカで売りにくくなった分、他の市場で価格を上げる可能性。
- 価格競争の激化(一時的): アメリカ向けだった在庫が日本に流れ、短期的に値下がりする可能性。
- サプライチェーンの変化: 生産拠点の中国離れが加速し、製品の供給や価格に影響が出る可能性。
- 国内EC(Amazon、楽天)への影響: 出品者の戦略変更や価格変動、サプライチェーンの変化による間接的な影響。
- インフレ圧力の高まり: 中国製品の値上がりが日本の物価全体に波及する可能性。
などが挙げられます。
「関税は自分には関係ない」と思わず、今後の国際情勢や貿易ルールの変更が、私たちの普段の買い物にどのような影響を与える可能性があるのか、引き続き注目していくことが重要です。