2025年、世界同時株安が起こっています。4月には世界の株式市場が急落し、「コロナショック以来」とも言われるパニックが広がっています。
恐怖指数(VIX)は58にまで上昇し、S&P500やナスダックは20%以上の下落を記録しました。
この混乱の背景にあるのが、アメリカによる前例のない一律高関税の再導入。
トランプ大統領による「相互関税」方針が再び表舞台に現れたのです
本記事では「アメリカ関税は愚策」という、現在主流になっている意見に対して、客観的に反論してみたいと思います。
「愚策」か、それとも戦略か?トランプ関税の衝撃

トランプ大統領は、主要貿易国に対して一律10〜25%の関税を発動。
この発表を受け、株価は急落。各国メディアは「経済を自滅させる愚策だ」と一斉に批判の声を上げています。
しかし、こうした一方的な評価に対して、異なる視点も考えられます。
それは「この政策は短期的な経済的ダメージを織り込んだ上で、長期的な戦略を狙ったものではないか?」という仮説です。
もちろんこの仮説は断定ではなく、ひとつの可能性に過ぎません。
ただし、アメリカの意図を単なる誤算と断じてよいのかを考えることには意味があるでしょう。
【視点1】米中の構造的違い:内需アメリカ vs 輸出型中国
この仮説を支える前提は、アメリカと中国の経済構造の違いです。
アメリカは内需が強く、食料・エネルギーともに一定の自給力を持ちます。短期的には混乱があっても、長期的には回復する「耐久力」があります。
一方、中国は経済成長を輸出に大きく依存しており、世界経済との接続が絶たれると深刻な影響を受けやすい構造です。
この関税政策は、表面的には「自国の首を絞める」ように見えても、構造的により脆弱なライバルに深手を負わせる狙いがあるのではないかという見方が成り立ちます。
【視点2】中国経済の三重苦:輸出減・債務爆弾・国際的孤立
関税強化が中国にもたらすリスクは、一つではありません。複数の脆弱性が複合的に絡み合っています。
中国が直面する関税強化に伴うリスクは複合的な性質を持っています。中国経済はGDPにおける輸出依存度が高く、特に米国向け製品が関税の影響を大きく受けやすい状況にあります。
同時に、地方政府や国有企業が抱える債務総額は継続的に増加しており、経済成長が鈍化した場合にデフォルトの連鎖反応が起こる懸念があります。さらに、米国が同盟国に対して中国との取引制限を促す動きが強まれば、中国の国際的孤立も懸念されます。
これらの「三重苦」は、1990年代に日本が経験したバブル崩壊と長期停滞を超える規模のリスクを中国経済にもたらす可能性があります。
【補足視点】関税発動の理由は「戦略」だけか?
ここまで「アメリカの戦略的意図」にフォーカスしてきましたが、もちろんそれが唯一の説明ではありません。
アメリカの関税政策には、戦略的意図だけでなく複数の背景要因が考えられます。国内政治面では、トランプ再選に向けた支持層への訴求や製造業回帰のアピールという側面があります。
また、インフレ抑制や経済安定化を狙った政策が意図せず株価暴落を招いた可能性も否定できません。さらに、中国のみならずEUや日本といった他国に対する牽制としての役割も想定されます。
このように関税発動の背景には複合的な動機が存在するため、一つの仮説に固執せず、多様な可能性を考慮する柔軟な視点が重要となります。
【展望】世界秩序の再編か、それとも単なる混乱か
今回の関税合戦が長引けば、世界経済は再びブロック化に向かう可能性があります。
貿易の流れが停滞し、各国が「自国優先」に舵を切る中で、国際協調の枠組みは揺らぎつつあります。
その中で、アメリカは「混乱の創出者」として再び覇権の主導権を握ろうとしているのかもしれません。
ただし、それが意図されたものかどうかは、今後の外交・経済政策の動向を見極めていく必要があります。
【まとめ】思考実験として読む:戦略か、偶然か
本記事で提示したのは、あくまで「ひとつの仮説」に過ぎません。
トランプ関税には、短期的な痛みを引き換えに長期的な目的を狙った戦略性がある――そう考えると、現在の株価暴落も別の意味を持つように見えてきます。
ただし、すべてを「戦略」で片づけてしまうのは危険です。
陰謀論と事実の間にあるグラデーションを読み解くには、複数の視点から情報を捉えることが不可欠です。
未来の経済を見通すために必要なのは、「主流」か「反主流」かではなく、多角的で柔軟な思考です。