新NISAでコツコツ資産形成を始めた矢先、もし市場が暴落したら、気が気ではありませんよね。
「自分の資産はどうなるの?」「今すぐ売るべき?」「それとも買い増しのチャンス?」
そんな不安や疑問でいっぱいになるかもしれません。
この記事では、新NISA運用中に暴落が起きた際に、あなたが取るべき具体的な行動と、絶対に避けるべきNG行動を解説します。
過去の暴落事例から学び、冷静に状況を判断し、長期的な資産形成を成功させるためのヒントが満載です。
慌てず、この記事を読んで、いざという時に備えましょう。
暴落はなぜ起きる?

市場が大きく下落する「暴落」は、投資につきものです。
では、なぜ暴落は起こるのでしょうか?まずはその原因を知っておきましょう。
一般的な暴落の原因
暴落を引き起こす要因は様々ですが、主に以下の3つのパターンが考えられます。
金融政策の転換: 中央銀行がインフレ抑制のために利上げを行ったり、市場に出回るお金の量を減らす量的引き締め(QT)を行ったりすると、企業や個人の資金調達コストが上昇し、景気への懸念から株価が下落することがあります。資金が株式市場から引き上げられる動きも、下落要因となります。
経済・景気の急変: 景気後退(リセッション)の懸念が高まったり、失業率の急上昇や深刻なインフレが発生したりすると、企業業績の悪化や消費の冷え込みが予想され、株価は大きく売られやすくなります。
外部要因ショック: 予測が難しい突発的な出来事も暴落の引き金になります。例えば、戦争や紛争といった地政学リスクの高まり、大規模な自然災害、そして記憶に新しい感染症のパンデミックなどは、経済活動や人々の心理に大きな影響を与え、市場の混乱を招きます。
今回は「トランプ関税ショック」
現在(あるいは過去の事例として)、市場を揺るがしている要因の一つとして「トランプ関税ショック」が挙げられます。
これは、アメリカのトランプ大統領が、世界の様々な国々に対して異例とも言える高い関税を発動したことに端を発しています。
トランプ氏の発言や政策は、予測不可能な側面もあり、市場に大きな不安をもたらすことがあります。特に関税の応酬は米中貿易摩擦の再燃といった懸念につながり、世界経済の先行き不透明感を強め、為替市場や株式市場の変動要因となります。
関税が強化されれば、輸出入を行う企業のコストが増加し、業績の下方修正リスクが高まります。こうした状況から、投資家心理は悪化し、「リスクオフ」の姿勢が強まります。つまり、株式などのリスクが高いとされる資産を売却し、比較的安全とされる資産(例えば、債券や金など)へ資金を移動させる動きが活発になり、株価下落につながるのです。
暴落の際に取るべき行動は?

実際に暴落に直面したら、どう行動すればよいのでしょうか?パニックにならず、冷静に対処するためのステップを見ていきましょう。
いったん落ち着く・現状把握
まずは冷静になり、現状を把握: 最も大切なのは、慌てないことです。深呼吸をして、感情的な判断を避けましょう。
資産状況の確認と市場情報の収集: まず、ご自身のNISA口座の評価額がどうなっているか、どんな銘柄を保有しているかを確認します。同時に、なぜ市場が下落しているのか、信頼できるニュースソース(大手メディア、証券会社や金融機関のレポートなど)で情報を集め、全体像を把握しましょう。噂や不確かな情報に惑わされないことが重要です。
今後の方針決め(主に3パターン)
現状を把握したら、今後どうするか方針を決める必要があります。
主に「買い増し」「積立中止」「売却」の3つの選択肢が考えられますが、判断する上で以下の点を考慮しましょう。
投資方針の見直し: NISAを始めた目的(長期的な資産形成など)や当初の投資計画(投資対象、積立額、期間など)を再確認し、今回の暴落を踏まえてもその方針を継続すべきか、見直す必要はないかを考えます。
自分のリスク許容度の再確認: 今回の下落でどの程度不安を感じましたか? どのくらいの含み損までなら精神的に耐えられますか? 自分のリスク許容度を改めて認識し、それに合った行動を選択することが大切です。
これらを踏まえた上で、具体的な選択肢を見ていきましょう。
買い増し
非課税枠を活かした安値購入の好機と捉える: 暴落は、見方を変えれば、将来有望な投資信託や株式を安く買えるチャンスでもあります。NISAの非課税枠を有効に活用し、将来の値上がりを期待して買い向かう戦略です。
余剰資金で無理のない範囲で対応する: ただし、買い増しは必ず生活に影響のない「余剰資金」で行いましょう。無理な投資は禁物です。
購入銘柄の将来性を改めて見直すタイミング: なぜその銘柄を買うのか、長期的に見て成長が期待できるのか、改めて投資対象を見直す良い機会にもなります。
積立中止
自動購入が不安なら一時停止も選択肢: 毎月自動で積み立てている設定が、下落局面では不安に感じるかもしれません。そのような場合は、一時的に積立を停止することも選択肢の一つです。
暴落の全体像が見えるまで様子を見る: 市場がどこまで下がるのか、全体像が見えるまで一旦様子を見たいという考え方もあります。
中止後の再開タイミングをあらかじめ考えておく: 積立を中止する場合、いつ、どのような状況になったら再開するのか、ある程度目安を決めておくと良いでしょう。
精神的な負担軽減: 一時的に投資から距離を置くことで、精神的な負担を軽減できるメリットがあります。
ただし、機会損失の可能性もあり、再開タイミングの難しさも考慮: 価格が安い時に買えないため、ドルコスト平均法のメリットを失う(機会損失)可能性があります。また、最適な再開タイミングを見極めるのは難しいというデメリットも認識しておきましょう。
売却
損失拡大の回避(損切り): 保有している資産の下落が続き、これ以上の損失に耐えられない、あるいは自身のリスク許容度を明らかに超えていると判断した場合、損失を確定させてでも売却する(損切り)という選択肢があります。
現金化による安心感: 資産が現金の形になることで、市場の変動から解放され、精神的な安定を得られるメリットがあります。
将来のリターン放棄: ただし、特に市場の底値付近で売却してしまうと、その後の市場回復局面でのリターンを得る機会を完全に失ってしまうリスクがあります。売却は慎重に判断する必要があります。
暴落時に絶対にやってはいけないこと

暴落時には、冷静さを失ってしまいがちですが、取ってはいけない行動があります。これを行うと、大切な資産を失ったり、将来のチャンスを逃したりすることになりかねません。
狼狽(ろうばい)売り
最も避けるべきが「狼狽売り」: 株価の急落や周りの悲観的な雰囲気に飲まれ、恐怖心から保有資産をすべて投げ売りしてしまうのが「狼狽売り」です。これは絶対に避けたい行動です。
底値で手放すリスクについて分かりやすく解説: 多くの場合、個人投資家が恐怖のあまり売却するのは、市場が底を打つ、あるいは底に近い局面であることが少なくありません。最も安い価格で手放してしまうリスクが高いのです。
損失を確定してしまい、その後の回復機会を逃す: 狼狽売りは、含み損を現実の損失として確定させてしまいます。さらに、その後の市場回復局面に参加できず、利益を得る機会を逃してしまうことになります。
感情での判断は後悔の元: 一時的な感情に流された判断は、後で冷静になった時に後悔につながることが多いものです。
無計画な買い増し
狼狽売りの反対もよくありません。つまり短期回復を前提とした“希望的観測”の買い増しは危険です。
「すぐに回復するだろう」といった根拠のない希望的観測だけで、焦って買い増しをするのは危険です。下落がさらに続く可能性も十分にあります。
ポートフォリオが偏ることでリスク増大: 「安いから」という理由だけで特定の銘柄やセクターに資金を集中させると、資産全体のバランス(ポートフォリオ)が偏り、かえってリスクを高めてしまう可能性があります。
安いから買うのではなく、将来性で判断する: なぜその銘柄が安いのか、長期的に見て本当に成長が期待できるのかを冷静に分析し、将来性に基づいて投資判断をすることが重要です。
生活資金に手を付ける
最もやってはいけないこと: 狼狽売りや無計画な買い増し以上に、絶対にやってはいけないのが、生活資金に手をつけることです。
投資の基本「生活費と投資資金は分ける」を守る: 投資は、あくまで失っても当面の生活に困らない「余裕資金」で行うのが大原則です。生活費や教育費、近い将来使う予定のあるお金を投資に回してはいけません。
万一の支出に対応できなくなり、さらにストレス増: 生活資金を投資に回してしまうと、急な病気や失業など、万一の支出に対応できなくなるリスクがあります。お金の心配は大きな精神的ストレスにもなります。
家計が不安定になると投資継続も困難に: 家計が不安定な状況では、長期的な視点で冷静な投資判断を続けることは困難になります。
借金して投資するなんて論外: 言うまでもありませんが、借金をしてまで投資を行うのは、リスクが高すぎる無謀な行為です。絶対にやめましょう。
過去の暴落とその後の回復時期

暴落は怖いものですが、過去にも市場は何度も大きな下落を経験し、そしてそれを乗り越えてきました。代表的な3つの暴落事例を見てみましょう。
ITバブル崩壊(2000年前後)
背景: 1990年代後半、インターネットの普及とともに、IT関連企業への期待が異常なほど高まり、株価が実態とかけ離れて急騰しました。
影響: 2000年頃をピークにバブルが崩壊。特に米国のハイテク株中心の市場であるNASDAQ総合指数は、ピーク時から一時70%以上も下落しました。多くのIT企業が淘汰されました。
回復: NASDAQ指数がITバブル前の最高値を更新するまでには、実に約15年もの長い年月を要しました。回復が非常に長期化した暴落の例です。
リーマンショック(2008年)
背景: アメリカの低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)問題が深刻化し、2008年9月に大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻したことを引き金に、世界的な金融危機へと発展しました。
影響: 世界同時株安となり、日経平均株価もピーク時から半値以下になるなど、深刻な状況に陥りました。世界経済全体が大きなダメージを受けました。
回復: 各国政府や中央銀行による大規模な金融緩和策などが功を奏し、市場は徐々に回復。米国のS&P500種指数で見ると、約5〜6年でショック前の高値水準を回復しました(日経平均は約7年強)。回復にやや時間がかかった例と言えます。この時期に積立投資を継続していた人は、その後の回復局面で大きな利益を得ることができました。
コロナショック(2020年)
背景: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に大流行(パンデミック)し、各国で都市封鎖(ロックダウン)などが行われ、経済活動が急速に停止するとの懸念が広がりました。
影響: 2020年2月から3月にかけて、株価は史上稀に見るスピードで急落。わずか1ヶ月程度で世界的に大暴落しました。市場の不安心理を示すVIX指数(恐怖指数)も記録的な水準に達しました。
回復: しかし、各国政府・中央銀行による迅速かつ大規模な金融緩和策や給付金などの経済対策が打ち出された結果、株価は異例とも言える速さで回復(V字回復)。米国のS&P500種指数は、下落開始から約半年という短期間で最高値を更新しました(日経平均は約1年弱)。回復が非常に早かった点が特徴的です。
過去の主な暴落比較表
名称 | 起きた年 | 原因と特徴 | 回復にかかった期間 |
---|---|---|---|
ITバブル崩壊 | 2000年前後 | ・インターネット関連株の過熱 ・収益の伴わない企業への投機が集中 ・NASDAQ指数が大暴落 | 約10〜15年(銘柄により異なる) |
リーマンショック | 2008年 | ・サブプライムローン問題 ・金融機関の連鎖破綻 ・世界同時株安へ波及 | 約4〜5年 |
コロナショック | 2020年 | ・新型コロナウイルスによる経済活動停止 ・短期間で急落も、政策支援で急回復 | 約半年〜1年未満 |
暴落時に「やめた人」と「続けた人」の差

過去の暴落事例を見てきましたが、重要なのは「暴落時にどう行動したか」です。特に、投資を「やめた人」と「続けた人」とでは、その後の資産形成に大きな差が生まれる可能性があります。
例えば、リーマンショックのような大きな暴落が起こる前から、特定のインデックスファンドに毎月コツコツと積立投資をしていたと仮定しましょう。(ここにシミュレーション結果を示すグラフやデータを挿入するイメージ)。
「やめた人」の末路: 暴落による資産の目減りに耐えきれず、恐怖心から積立を中止したり、保有していた資産を底値付近で売却してしまったりした場合、その後の市場回復の恩恵を受けることができません。結果として、資産はほとんど増えないか、場合によっては元本割れのままになってしまう可能性があります。これは大きな「機会損失」と言えるでしょう。
「続けた人」の成果: 一方、暴落時も市場から退場せず、淡々と積立投資を継続した人はどうでしょうか。価格が下がっている局面では、同じ投資額でもより多くの口数を購入できます(ドルコスト平均法の効果)。市場が回復に向かうにつれて、安値で仕込んだ分が大きく値上がりし、資産を大きく増やすことができたのです。
このように、暴落時の判断一つで、10年後、20年後の資産額には顕著な差が生まれます。暴落はピンチであると同時に、長期投資家にとっては将来の資産を増やすチャンスにもなり得る、という視点を持つことが大切です。
NISAの基本的な考え方

暴落時に冷静に対応するためにも、NISAという制度、そして投資の基本的な考え方をしっかり理解しておくことが重要です。
NISAの目的は「長期的な資産形成」
制度の趣旨: 新NISAは、個人の資産形成を後押しするための税制優遇制度です。得られた利益(分配金や売却益)が非課税になるという大きなメリットがあります。これは、老後資金や子どもの教育資金など、将来に向けたお金を時間をかけて準備することを想定しています。
短期売買との違い: NISAは、頻繁に売買を繰り返して短期的な利益を狙う(デイトレードなど)ための制度ではありません。非課税投資枠には年間の上限があり、一度売却するとその枠は再利用できない(※新NISAの成長投資枠は翌年以降復活)といった制約もあります。長い目で見て資産を育てることを目指しましょう。
ゴール設定の重要性: 「いつまでに(例:20年後)」「いくら貯めたい(例:2000万円)」といった具体的な目標を設定することで、日々の価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けやすくなります。NISAは一発逆転を狙うものではなく、コツコツと時間をかけて資産を積み上げていく仕組みなのです。利益が非課税になるメリットを最大限に活かすには、やはり「時間」が必要なのです。
長期・積立・分散が基本
NISAで資産形成を成功させるための基本戦略は、投資の王道ともいえる「長期・積立・分散」です。
「長期」投資: 10年、20年、あるいはそれ以上といった長い期間で投資を続けることで、一時的な市場の変動リスクを平準化し、複利効果(後述)を最大限に活かすことを目指します。NISAの非課税メリットは、長期で運用してこそ大きな効果を発揮します。
「積立」投資: 毎月1万円など、定期的に一定の金額を投資し続ける方法です。これにより、価格が高い時には少なく、安い時には多く購入することになり、平均購入単価を抑える効果(ドルコスト平均法)が期待できます。感情に左右されず、機械的に投資を続けられる点もメリットです。
「分散」投資: 投資対象を一つに絞らず、複数の対象に分けて投資することで、リスクを軽減する考え方です。例えば、特定の国だけでなく、日本株、先進国株、新興国株などに地域を分散したり、株式だけでなく債券など値動きの異なる資産を組み合わせたり、一つの企業だけでなく複数の銘柄に分散したりする方法があります。NISAで投資信託を選ぶ際は、一本で様々な資産や地域に分散投資できるバランスファンドなども選択肢になります。単一銘柄への集中投資は避け、複数資産への分散でリスク低減を図りましょう。これは、長期的な成長を期待するNISAの設計思想にも合致しています。
複利効果とドルコスト平均法のメリット
「長期・積立・分散」と並んで、NISAのメリットを活かす上で重要なのが「複利効果」と「ドルコスト平均法」です。
- 複利効果とは: 投資で得た利益(分配金など)を元本に加えて再投資することで、その利益がさらに新たな利益を生み出す効果のことです。「利息が利息を生む」イメージで、投資期間が長くなるほど、雪だるま式に資産が増えていく可能性があります。NISA口座内で利益を再投資すれば、その利益も非課税の対象となります。
- ドルコスト平均法とは: 毎月一定額を買い続ける「積立投資」を行うことで、価格が高い時には少なく、価格が安い時には多く購入することになります。これにより、平均購入単価を抑える効果が期待できます。特に、今回テーマにしているような暴落時にも一定額で買い続けることで、より多くの口数を安く仕込むことができ、その後の価格回復局面でリターンが大きくなりやすいというメリットがあります。
まとめ
新NISAで資産形成を始めた矢先の暴落は、誰にとっても不安なものです。しかし、過度に恐れる必要はありません。最後に、大切なポイントをまとめます。
暴落への心構え: 投資の世界において、暴落は避けて通れないイベントの一つです。しかし、過去の歴史が示すように、市場は何度も危機を乗り越え、長期的には成長を続けてきました。過去の事例から学び、冷静に状況を受け止めることが重要です。
NISA活用の要点: NISAの最大の武器は「時間」です。「長期・積立・分散」という投資の基本原則を守り、短期的な値動きに一喜一憂せず、どっしりと構えましょう。利益が非課税になるメリットを最大限に活かし、将来の目標達成に向けて着実に資産形成を進めていくことが成功の鍵です。狼狽売りは絶対に避けましょう。
困ったときは: どうしても不安が拭えない、自分一人で判断するのが難しいと感じたときは、決して一人で抱え込まないでください。信頼できる金融機関の担当者や、独立系のファイナンシャル・プランナー(FP)など、専門家の意見を聞いてみるのも有効な手段です。客観的なアドバイスが、あなたの冷静な判断を助けてくれるはずです。
暴落を乗り越えた先には、きっと明るい未来が待っています。焦らず、諦めず、NISAを活用した長期的な資産形成を続けていきましょう。