コラム 暗号資産(仮想通貨)

株価が暴落するときに仮想通貨は「避難先」になるか?

なぜ世界の市場は同時に下がるのか?

世界中の国の株式市場(そしてそれらを組み入れた投資信託など)が、まるで「申し合わせたかのように」同時に下落することがあります。

これにはいくつかの理由が複雑に絡み合っています。

  • 経済のグローバル化
  • 情報伝達のスピードが速くなった
  • プログラムによる取引の増加
  • インデックス投資の増加

さらに現代では、ETFやインデックス投資が主流となった影響も大きいです。日米欧問わず、S&P500やMSCIなど共通のインデックスをベースに運用される資産が急増しており、それらが売られると、全体が連鎖的に下落する構造が強まっています。

市場の構造(繋がっている)ことが、同時に下がるひとつの要因です。

そしてこの構造は、暴落時ほど顕著に表れます。個別企業の業績や各国の政策などは、嵐の前ではほとんど無力です。暴風が吹けば、すべての船が一緒に揺れる。それが今の世界経済です。

暴落に強い資産とは?

株価が暴落する局面では、「何を持っていればよかったのか」が問われます。

市場が混乱し、リスク資産が売られる中でも、比較的安定して価値を保ちやすい資産があります。代表的なのは、現金・ゴールド・債券・不動産・インバース型ETFです。

現金は最もシンプルな防衛策で、暴落時に他の資産を割安で買い直す「余力」にもなります。ゴールド(金)は有事の避難先として長年信頼されており、インフレや通貨不安時に強みを発揮します。

国債(特に米国債)も安全資産とされ、利下げ局面では価格上昇が期待されます。

不動産は短期では下がりにくく、キャッシュフローがある点で他の資産と異なる特性を持ちます。そして、インバース型ETFは株価指数の逆方向に動く仕組みで、暴落時に利益を得られる数少ない手段です。

ただし、これらの資産にもリスクやタイミングがあります。万能な「絶対安全資産」は存在しない。だからこそ、資産を分散し、「何が起きても一部は守られる」状態をつくることが暴落時の最大の備えとなるのです。

仮想通貨は「新たなヘッジ資産」か?

仮想通貨(とくにビットコイン)が「デジタルゴールド」が新たなヘッジ資産になるという見方が出ています。

とはいえ現時点では、ビットコインはヘッジ資産というより「リスク資産」の性格の方が強いです。

また、今までのビットコインはナスダック(ハイテク株)と連動する傾向が顕著に見られました。

「デカップリングの予兆」か?

ところが、2025年4月の初期暴落時、その相関が切れたタイミングがあります。

この現象がデカップリング、つまり相関が切れることへの「予兆」なのか、一度限りの偶然にすぎないのか、今の段階では判別できません。

しかし、もし今後もビットコインが以下のような動きを見せていれば、「相関性が切れた(デカップリング)」と言えるかもしれません。

ただし、注目すべき動きではあります。今後、同様の市場ストレス局面で、ビットコインが繰り返し株式市場と異なる動き(デカップリング)を見せるようになれば、それはビットコインの市場における性質や、投資家による位置づけが変化しつつある可能性を示唆するものと言えるかもしれません。

ビットコインは新たな「資産クラス」

ビットコインとナスダックとの相関性が今後どうなるかは、正直なところ誰にも分かりません。

再び連動性を強めるかもしれませんし、あるいは、2025年4月の市場の動揺で見せたように、異なる動きをする局面が増えてくるかもしれません。

しかし、一つ確かなことは、ビットコインをはじめとする主要な仮想通貨が、単なる短期的な投機対象という段階を超えて、一つの独立した「資産クラス」として認識され始めているということです。

その背景には、いくつかの要因があります。

  • 機関投資家の本格参入
  • ビットコインETF(上場投資信託)が主要な証券取引所に上場
  • 独自の価値(希少性)
  • 市場規模の拡大: 仮想通貨全体の時価総額は、浮き沈みはありながらも長期的に拡大傾向にあり、無視できない規模の市場へと成長しています。

もちろん、価格変動の大きさ(ボラティリティ)や規制の不確実性、セキュリティリスクなど、解決すべき課題が多いことも事実です。

しかし、これらの課題を乗り越えながら、仮想通貨が株式、債券、不動産、コモディティ(金など)と並ぶ、オルタナティブ(代替)資産の一つ、すなわち新しい「資産クラス」としての地位を確立しつつあることは、もはや疑いようのない潮流と言えるでしょう。

次の暴落に備えて

歴史を振り返れば、世界的な市場の暴落は決して特別な出来事ではありません。5〜10年に一度は起こっている定期的な現象といえます。

  • ITバブルの崩壊(2000年前後)
  • リーマンショック(2008年)
  • コロナショック(2020年)
  • そして今年(2025年)の「トランプ関税ショック」

市場は幾度となく大規模な資産価格の下落を経験してきました。 

重要なのは、「次の暴落はいつか必ず来る」という前提に立ち、それに備えておくことです。

暴落に備えて何を持つか?

では、その来るべき日に備えて、私たちはどのような資産を持っておくべきなのでしょうか。

伝統的に、暴落時のリスクヘッジ資産としては、現金(特に基軸通貨である米ドル)、ゴールド(金)、そして一部の国債などが挙げられてきました。これらは比較的安全性が高いと考えられ、株式市場が混乱する中で資金の避難先となってきた実績があります。

ここに、将来的にビットコインが名を連ねる可能性はあるのでしょうか?

現状では、先述の通りボラティリティの高さなどの課題から、ビットコインをゴールドと同列の安全な避難先と見なすのは難しいでしょう。

しかし、もしビットコインが「デジタルゴールド」としての特性(希少性、非中央集権性)を市場により広く認識され、価値の保存手段としての信頼性を高めつつあります。

規制環境が整備され、機関投資家の長期保有が進み、市場の流動性がさらに高まる中で、次の大きな金融危機の際には、ポートフォリオのリスクヘッジ手段として、ゴールドや債券と並んでビットコインが選択肢の一つとして真剣に検討される。そんな日が、もしかしたら遠からず来るのかもしれません。

もちろん、これは現時点での可能性の話であり、過度な期待は禁物です。

しかし、新しい資産クラスとして成長するビットコインの動向を注視し、その特性とリスクを理解した上で、自身のポートフォリオ戦略にどう組み込むかを考えておくことは、これからの資産運用において無駄にはならないはずです。

ビットコインの「優位性」

ビットコインの「優位性」

ビットコインは、従来の株式や債券、不動産、あるいはゴールドといった資産クラスと比較して、どのようなユニークな強み、すなわち「優位性」を持っているのでしょうか。ここでは主な3つの点を挙げてみましょう。

① 圧倒的な上昇ポテンシャル(ただしハイリスク)

ビットコインが多くの投資家を惹きつける最大の理由の一つは、その驚異的な価格上昇の可能性でしょう。

過去を振り返れば、他のどの資産クラスよりも短期間で高いリターンをもたらした局面が何度もありました。

先行者利益を享受した投資家の中には、莫大な富を築いた人もいます。この「一攫千金」の夢は、ビットコイン投資の大きな魅力と言えます。

しかし、この点は注意が必要です。 高い上昇率の可能性は、同時に極めて高いボラティリティ(価格変動リスク)と表裏一体です。価格が数日で数十パーセント下落することも珍しくなく、大きな損失を被る可能性も他の伝統的な資産クラスより格段に高いと言えます。まさにハイリスク・ハイリターンの代表格であり、「安定した価値の保存」というヘッジ資産の観点からは、むしろ弱点ともなりうる性質です。

② 中央集権的な管理者がいない(非中央集権性)

ビットコインの最も根源的な特徴であり、他の多くの資産と一線を画すのが、この非中央集権性です。

ビットコインは、特定の国や政府、中央銀行、あるいは特定の企業によって管理・発行されているわけではありません

。その運営は、世界中に分散されたネットワーク参加者(マイナーやノード)と、予めプログラムされたルールによって支えられています。

これは、特定の国や金融機関の破綻リスク、あるいは政府による預金封鎖や過度な金融緩和(インフレ)といった「中央集権リスク」から独立していることを意味します。

理論上は、国家の枠組みを超えた価値の保存や移転が可能であり、一部では「デジタルゴールド」として、法定通貨や金融システムへの不信感に対するヘッジとして期待されています。

③ 24時間365日、グローバルに取引可能

株式市場のように取引時間が平日の日中に限定されていたり、週末や祝日には取引が停止したりすることはありません。

ビットコインをはじめとする主要な仮想通貨は、原則として24時間365日、世界中の取引所で売買が可能です。

これにより、投資家は時間や場所を選ばずに、いつでも取引の機会を得ることができます。

突発的なニュースやイベントに迅速に対応したり、自身のライフスタイルに合わせて取引したりできる利便性は、大きなメリットと言えるでしょう。

また、常に取引が行われていることは、市場の流動性を高める一因にもなります。

まとめ

次にくる暴落のとき、資産の「避難先」として有効なのは、ビットコインかもしれません。

もちろん、ビットコインは、現状では「ヘッジ資産」ではなく「リスク資産」です。

ボラティリティ(変動性)の高さは、投資経験の浅い人やリスク許容度の低い人にとっては、大きなストレスや損失の原因となりえます。

しかし、この性質は徐々に薄まりつつあり、今やビットコインはひとつの資産クラスとしての地位を確立しています。

現在はナスダックなど別の資産との関連性が強い傾向にあり、独立した特徴がない部分もあります。それでも、その上昇率は他の資産では類を見ないほど高いものです。(変動性は高いですが)

もしかしたら、ビットコインがデジタルゴールドとしての地位を不動のものとし、「本物のヘッジ資産」になる日が来るのも遠い未来ではないのかもしれません。

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