2025年、再び世界の注目を集めるトランプ氏。彼の一挙手一投足が金融市場を揺さぶる「トランプトレード」が再来しています。しかし、2016年当時とは市場環境もトランプ氏の手法も変化しており、過去の成功体験が通用するとは限りません。
本記事では、2025年版トランプトレードの核心を読み解き、「上げは売り、下げは買い」という逆張り戦略こそが有効であるという仮説に基づき、その具体的な実践法と注意点、注目すべきセクターについて解説します。
これは教科書的な分析ではなく、変動の激しい現代市場を生き抜くための、実践的なトレード戦略です。
トランプトレード2025年版とは?

トランプトレード2016年との違い
2025年版の“トランプトレード”は、2016年当時とは様相が異なります。
2016年は、トランプ氏の大型減税やインフラ投資への期待から、「ドル高 × 米株高」という分かりやすいトレンドが形成されました。市場はトランプ政権の経済政策に大きな期待を寄せ、リスクオンムードが広がったのです。
しかし、2025年現在は状況が複雑化しています。世界的なインフレ圧力、高金利環境、地政学リスクの高まり、そしてトランプ氏自身の予測不可能性の増大により、市場は単純な期待だけでは動かなくなりました。
むしろ、彼の保護主義的な政策や対立的な外交姿勢が、市場の不安定要因として強く意識されています。その結果、2025年版トランプトレードは、単純な「ドル高×米株高」ではなく、「ドル安(または不安定)× 米株乱高下」という特徴を持つ可能性が指摘されています。
教科書通りが通用しない理由
なぜ、2025年版トランプトレードでは教科書的な分析や過去の経験則が通用しにくいのでしょうか? 主な理由として、以下の点が挙げられます。
- 政策の二転三転と予測不可能性: トランプ氏の政策決定プロセスは、時にトップダウンで即興的、かつ過去の発言から大きく転換することも少なくありません。関税率の突然の変更、国際合意からの離脱・再検討など、予測が困難な「サプライズ」が頻発する可能性があります。これにより、市場はファンダメンタルズ分析だけでは捉えきれない、ヘッドラインに左右される展開となりがちです。
- 市場の過剰反応とアルゴリズム取引: ソーシャルメディアの発達とアルゴリズム取引の普及により、市場はトランプ氏の発言やニュースヘッドラインに対して、以前にも増して短時間で過剰に反応する傾向があります。瞬間的な急騰・急落は、必ずしも経済実態を反映しているとは限らず、ノイズも多く含まれます。
- トランプ陣営のインサイダー疑惑(補足要): 市場の一部では、トランプ陣営に近い関係者によるインサイダー取引が疑われるような値動きが見られるとの指摘もあります。政策発表前に特定の銘柄が動くなど、情報の非対称性が市場の歪みを生んでいる可能性も、一部で囁かれています。(※この点については、事実確認と慎重な判断が必要です)
従来の経済理論やテクニカル分析だけでは捉えきれない、複雑で気まぐれな相場環境を生み出している
必勝法は「トランプ下げは買い、トランプ上げは売り」?
このような予測困難な市場環境において、有効な戦略として注目されるのが「トランプ下げは買い、トランプ上げは売り」という戦略です。
これは、トランプ氏の発言や政策発表が引き起こす市場の「過剰反応」を利用する考え方に基づいています。
- トランプ氏の発言や関税政策は、市場を一時的に動揺させるが、しばしばリバウンドを招く: 例えば、突然の対中関税強化発言で株価が急落しても、その後、交渉期待や別のポジティブなニュースで急速に値を戻すといったパターンが見られます。これは、市場参加者がトランプ氏の「ディール(取引)の駆け引き」に慣れつつあり、最初のショックは大きくても、冷静さを取り戻す動きも早いことを示唆しています。
- 「悲観による急落」→「楽観で戻す」→「材料出尽くしで再下落」の往復型パターン: 市場はネガティブなニュースで過剰に悲観して急落し、その後、少しの安心材料で楽観に傾いてリバウンド、しかし根本的な問題が解決したわけではないため、再び下落する、といった往復運動を繰り返しやすいと考えられます。
- アルゴリズムもこの値動きを助長: 高頻度取引(HFT)などのアルゴリズムは、こうした短期的な価格変動を捉えようとするため、ボラティリティをさらに増幅させる傾向があります。この大きな値動きは、逆張りのエントリータイミングを計りやすい環境を提供しているとも言えます。
したがって、感情的なパニック売りが出たところを冷静に拾い、逆に楽観ムードで急騰したところを利益確定または売り向かう、という逆張り戦略が、2025年版トランプトレードにおいては有効な「必勝法」となり得る、というのが本稿の仮説です。
具体的トレードアイデア──「トランプ下げは買い、上げは売り」の実践法

トランプ下げは買い──“悲観急落”を逆張りで拾う
トランプ氏による関税発表、中国批判ツイート、FRBへの圧力、地政学的緊張を高める発言など、“ネガティブヘッドライン”によって市場全体、あるいは特定のセクターが瞬間的に急落する場面が想定されます。これは、パニック売りが出やすい状況であり、逆張りの買いエントリーの好機となり得ます。
推奨アクション例
- インデックス買い: S&P500連動ETFやTOPIX先物など、市場全体の急落に対して、段階的に打診買いを入れる。一度に大きなポジションを取らず、下落幅を見ながら分割してエントリーする。
- コモディティ・防衛関連へのエントリー: 地政学リスクの高まりやインフレ懸念から、金ETF(GLDなど)や銀ETF(SLVなど)、あるいは防衛関連株が代替的に買われる可能性があるため、これらの急落場面での押し目買いを検討。
- 短期オプション戦略: 相場の急反発を狙い、短期的なコールオプションの買い、またはプットオプションの売りを検討する。(オプション取引はハイリスクです)
トランプ上げは売り──“安心感リバウンド”で利確
一方で、「関税適用の一時停止」「中国との会談予定発表」「予想を上回る強気な経済指標(例:雇用統計)」などのポジティブな材料が出て、市場が一時的な安心感からリバウンド(急騰)する場面も想定されます。
これは、短期的な利益確定や、逆張りの売りエントリーのタイミングとなり得ます。
推奨アクション例(仮説)
- ポジション縮小・利確: 下げ局面で買ったポジションがあれば、急騰場面で欲張らずに利益確定する。往復運動を想定し、高値掴みを避ける。
- 先物売り・プット買い: 株価指数が過剰に買われていると判断した場合、株価指数先物の売りや、プットオプションの購入により下落に備える。
- 安全資産への一部シフト: VIX指数連動商品(恐怖指数)や金ETFなど、市場の楽観ムードが高まった際に、ポートフォリオの一部を“安全資産”とされるものにシフトし、リスクヘッジを図る。
リバウンドが本物か、一時的なものかを見極めるのは困難ですが、「上げたら売る」というルールを機械的に適用することで、感情に左右されずに利益を確保しやすくなります。
「売り買い往復戦略」に向いた銘柄・資産クラス
この「上げで売り、下げで買い」という往復戦略は、特に以下のような値動きの激しい(ボラティリティの高い)銘柄や資産クラスで有効性を発揮する可能性があります。
- 高ボラティリティ銘柄:
- 半導体関連株: テクノロジー摩擦やサプライチェーン問題の影響を受けやすく、値動きが大きい。
- 素材株: 景気敏感株であり、関税やインフラ投資の動向に左右されやすい。
- レバレッジ型ETF: 指数の数倍の値動きをするため、短期的な価格変動を捉えやすい(リスクも高い)。
- 関税の影響を強く受けるセクター:
- 自動車: 輸入関税の影響を直接受ける。
- 鉄鋼: 保護主義的な政策の対象となりやすい。
- 農業: 貿易摩擦の報復対象となりやすい。
- 代替資産:
- ゴールド(金): 地政学リスクやインフレ懸念、ドルへの不信感が高まると買われやすい。
- ビットコイン: 金融システムへの不確実性が高まる局面で、代替的な価値保存手段として注目される可能性がある(ボラティリティは極めて高い)。
- スイスフラン: 伝統的な安全通貨として、リスクオフ局面で買われやすい。
これらの銘柄・資産クラスは、トランプ氏の政策や発言によって価格が大きく振れやすいため、逆張り戦略の対象として検討できます。ただし、それぞれ固有のリスク要因も存在するため、十分な分析が必要です。
為替(ドル円)はどう動く?円安シナリオとリスク
トランプ氏の政策は為替市場、特にドル円レートにも大きな影響を与えます。過去の傾向や想定される政策から、ドル高・円安が進む可能性や、その要因、逆に円高に振れるリスク要因について解説します。
トランプ政策とドル円の関係(金利・貿易)
トランプ政権下のドル円相場は、主に以下の要因によって動くと考えられます。
- 金融政策(FRBへの影響): トランプ氏は過去、FRBに対して利下げ圧力をかける場面が多く見られました。もし同様の圧力がかかり、市場が利下げ期待を織り込むようであれば、ドル安(円高)要因となります。逆に、インフレ抑制を重視する姿勢を見せれば、ドル高(円安)要因です。トランプ氏のFRBに対するスタンスが重要になります。
- 貿易政策(関税・貿易摩擦): 保護主義的な関税政策や、特定国(特に中国)との貿易摩擦激化は、世界経済への懸念を高め、リスクオフの円高要因となり得ます。一方で、米国経済への資金還流(リパトリ)を促す政策や、大幅な減税による景気刺激期待は、ドル高(円安)要因となる可能性もあります。
- 「強いドル」か「弱いドル」か: トランプ氏は輸出競争力のために「ドル安」を志向する発言をすることもありましたが、一方で「強いアメリカ」の象徴として「強いドル」を好むとも解釈できる発言もありました。どちらの姿勢を重視するかによって、ドル円の方向性は大きく変わります。
このように、トランプ政策はドル円に対して多方向の影響を与えうるため、単純な方向性を予測するのは困難です。
円安が進行する可能性のあるシナリオ
ドル高・円安が進行するシナリオとしては、以下のようなケースが考えられます。
- 大幅な減税・インフラ投資による米景気刺激期待: 財政出動により米国の経済成長期待が高まれば、米金利上昇観測と合わせてドルが買われやすくなります(ドル高・円安)。
- 米国内への資金還流(リパトリエーション)促進策: 米企業が海外に留保している資金を米国内に戻すことを促す税制などが導入されれば、ドル買い需要が発生し、ドル高・円安要因となります。
- 日米金利差の拡大: 日本が金融緩和を続ける一方で、米国が(インフレ抑制などで)高金利を維持、あるいは追加利上げを行うような状況になれば、金利差を意識した円売り・ドル買いが進む可能性があります。
- 地政学リスクの高まり(限定的状況下): 通常、地政学リスクはリスクオフの円高要因ですが、リスクの中心が欧州やアジアで、米国への資金逃避が起きるような特殊な状況下では、ドルが相対的に買われ、円安となる可能性もゼロではありません。
為替介入や他国の動きなど注意すべき点
ドル円相場を見る上では、以下の点にも注意が必要です。
- 日本の為替介入: 急激な円安が進行した場合、日本政府・日銀による円買い介入が行われる可能性があります。介入警戒感が高まると、円安の勢いが抑制されることがあります。
- 米国の為替政策: トランプ政権が再び「為替操作国」認定などをちらつかせ、円安を牽制する可能性もあります。
- 他国の通貨動向: ドル円だけでなく、ユーロや人民元など他の主要通貨の動向もドル円相場に影響を与えます。特に中国との関係は重要です。
- 市場センチメント: 世界経済全体のセンチメントが悪化すれば、リスクオフの円買いが強まる可能性があります。
為替相場は二国間だけでなく、様々な国の政策や思惑、市場心理が複雑に絡み合って動くため、多角的な視点が必要です。
トランプトレードの注意点
「上げは売り、下げは買い」戦略を実践する上で、特に注意すべき点を3つ挙げます。
エントリー判断の見極め
急落はチャンスか「落ちるナイフ」か?
ヘッドラインによる急落は逆張りの好機に見えますが、それが一時的なパニック売りなのか、それとも市場構造の変化やファンダメンタルズの悪化を示す「落ちるナイフ」の始まりなのかを見極める必要があります。
下落の背景にある情報を冷静に分析し、支持線やテクニカル指標なども参考に、エントリーの是非を慎重に判断することが重要です。飛びつき買いは避け、状況を見極める時間を持つことも大切です。
一時的リバウンドに過度な期待をしない
コロコロ変わるから。 トランプ氏の発言や政策は、前述の通り変わりやすい特徴があります。
ネガティブなニュースの後にポジティブなニュースが出て一時的にリバウンドしても、それが持続的な上昇トレンドに繋がるとは限りません。むしろ、短期的な安心感で反発した後は、再び別の懸念材料で下落する可能性も十分にあります。
「上げたら売る」の原則を守り、リバウンドに対して過度な期待を持たず、利益確定をこまめに行う姿勢が求められます。
情報の“鮮度”と“ノイズ”の見極め
見分ける力が問われる。 トランプトレードでは、SNSやニュース速報など、情報のスピードが非常に重要になりますが、同時に情報の質も問われます。
真偽不明の情報、意図的に流される噂、市場のセンチメントを煽るだけのノイズも大量に飛び交います。情報の「鮮度」を意識しつつも、その情報が信頼できるソースからのものか、客観的な事実に基づいているか、市場の反応は過剰ではないか、といった点を見極める「目利き」の力が、これまで以上に重要になります。
トランプトレード2025年版の勝ち組/負け組セクター
トランプ氏の政策が実現した場合、恩恵を受けるセクターと、逆に試練を迎えるセクターが出てくると考えられます。
勝ち組:コモディティ・防衛
- コモディティ(資源): インフラ投資拡大への期待や、保護主義的な政策によるインフレ圧力の高まりから、原油、天然ガス、金属などのコモディティ関連企業には追い風となる可能性があります。また、地政学リスクの高まりは金(ゴールド)などの貴金属価格を支える要因にもなり得ます。
- 防衛: 国防費増額への期待や、国際的な緊張感の高まりを受けて、防衛関連企業は恩恵を受ける可能性が高いセクターと見られています。
負け組:輸出製造業・ハイテクの試練
- 輸出製造業: 関税引き上げや貿易摩擦の激化は、海外への輸出が多い自動車産業や、グローバルなサプライチェーンに依存する製造業にとって、コスト増大や販売機会の損失に繋がるリスクがあります。
- ハイテク: 特に中国とのテクノロジー覇権争いが再燃した場合、半導体関連企業や、中国市場への依存度が高いハイテク企業は、規制強化やサプライチェーン寸断のリスクに晒される可能性があります。
引き分け:金融、インフラ、再生可能エネルギーなど
- 金融: 規制緩和期待がある一方で、市場の不安定化や金利動向の不確実性から、一概に勝ち組とは言えない可能性があります。
- インフラ: 大規模なインフラ投資計画が打ち出されれば建設関連などは恩恵を受けますが、財政問題や計画の遅延リスクも考慮する必要があります。
- 再生可能エネルギー: トランプ氏は伝統的なエネルギー産業を重視する傾向があるため、政府の支援削減などが懸念されますが、世界的な脱炭素の流れや技術革新もあり、必ずしも一方的な負け組とはならない可能性も。「中立」ゾーンか、政策次第で明暗が分かれるセクターと言えそうです。
まとめ—トランプ2.0時代のポートフォリオ再設計
2025年版トランプトレードは、2016年とは異なる「ドル安(不安定)× 乱高下」という特徴を持つ可能性があり、教科書通りの投資戦略が通用しにくい、予測困難な市場環境となることが想定されます。
本稿で提示した「仮シナリオ」としての「必勝法」、すなわち「トランプ下げは買い、トランプ上げは売り」という逆張り戦略は、こうした市場の過剰反応とボラティリティを利用する一つの考え方です。
来る「トランプ2.0」時代(仮)に向けて、自身のポートフォリオが特定のセクターやシナリオに偏っていないかを見直し、ボラティリティへの耐性を高め、機動的な資産配分変更も視野に入れたポートフォリオの再設計を検討することが、不確実な時代を乗り切る鍵となるでしょう。
免責事項
本記事は、特定の金融商品の取引を推奨するものではありません。投資に関する決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。記事中の「必勝法」という表現は、あくまで仮説に基づく戦略の一例を示すものであり、投資の成功を保証するものではありません。