「リップル(XRP)はブロックチェーンではないから信頼できない」という声を聞くことがあります。実際はどうなのでしょうか?
結論をいうと、厳密にはブロックチェーンではないが、それなりの堅牢性は保持しています。
では、なぜ「リップル懐疑論者」の人が少なからずいるのか。そこには、論理的に正しい部分と、そうでもない部分(よくわからずに印象で言っているだけ)があると思います。そこで、今回はリップルについて掘り下げます。
- リップルとは何なのか?
- リップルはブロックチェーンではないのか?
- リップルは今後どうなっていくのか?
本記事を読めば、リップルについての概要や知っていたつもりで実は知らなかったことが理解できます。
ぜひ最後までご覧ください。(10分程度で読めます)
リップルはブロックチェーンではない?
「リップルはブロックチェーンを使っていない」という指摘は、ある部分において正しいですが、もう少し解像度を上げて理解する必要があります。
リップルはブロックチェーンのシステムを使っていません。しかしそれは、ブロックチェーンではない=信頼性の低いシステムということを必ずしも意味しません。これは仮想通貨に携わる人であれば、知っておくべきことです。
ブロックチェーンでなければハッキングや盗難が避けられない、というわけではありません。そもそも、ブロックチェーンのセキュリティは完璧ではありません。
リップル(XRPL)は、暗号資産の基盤技術のひとつである「分散型台帳」を使っています。合意形成(コンセンサス)がアルゴリズムによって行われているのも、他の暗号資産と同じです。
リップルは、Ripple Protocol Consensus Algorithm(RPCA)と呼ばれる独自のアルゴリズムを採用しています。
RPCAとブロックチェーンの違いについて
ブロックチェーンとの違いについて簡単に解説します。一般的なブロックチェーンは新しい取引をブロック単位で追加し、それらを時系列に鎖(chain)のようにつなぎ、その構造によって暗号化を強化しています。
一方、リップル(XRP Ledger)は、ブロックの連鎖ではなく「最新状態を直接更新」しています。取引履歴を全体として共有・同期させる。これが分散型台帳です。
コンセンサスアルゴリズムの違い
ブロックチェーンは「マイニング(PoW)」や「ステーキング(PoS)」によってブロック生成者が決められる仕組みです。
一方、リップルは「UNL(Unique Node List)」とよばれる信頼されたノード(検証者リスト)の合意で取引を確定します。この違いがあるために「リップルは中央集権的」といわれるのでしょう。
独自合意アルゴリズム「RPCA」には、ブロックチェーンと比べて高速・省エネというメリットはあります。これはリップルの持つアドバンテージです。
しかし、同時にその特徴は中央集権的でもある。つまり、リップルは効率性と引き換えに完全な分散性を犠牲にしているわけです。
また、リップルは非中央集権的といえますが、完全に1者(社)に権限が集中しているわけではないことも忘れがちな事実です。ビットコインも完全に分散しているとは言えない部分もあります。グラデーションの濃淡の問題です。
そもそもリップルについて「勘違い」している人も
「リップル」という単語は、文脈によって意味するものが変わる曖昧な言葉として使われています。
多くの人が「リップル」という言葉を使うとき、仮想通貨の銘柄XRP(エックスアールピー)のことを指していることが多いです。
しかし、本来であれば、「リップル」が指すのは以下です。
- Ripple社(企業)
- RippleNet(送金ネットワーク)
- XRP / XRP Ledger(暗号資産と台帳)
この3つを分けて理解するだけでも、リップルについての解像度が高くなります。
まず、仮想通貨(トークン)名はリップルではなく「XRP(エックスアールピー)」が正式名称です。
今でも多くの人がXRP=リップルという認識を持ってい流と思われます。
しかし、それでは認識が曖昧になってしまうので、ここでハッキリ分けておきましょう。
リップルは企業の名前です。そしてトークン名はXRPです。
リップルはブロックチェーン構造を採用しなかったのはなぜか
リップルが目指したのは、「国際送金を高速・低コストで行うためのインフラ」です。
ビットコインが「中央銀行に依存しない通貨」を目指したのに対し、リップルはむしろ「銀行間送金ネットワークの効率化」を目指して、軽量・即時性重視の仕組みを採用しました。
目的が「決済システム」だったから、リップルはブロックチェーンを採用しなかったのでしょう。
リップルの利点と欠点
リップルがブロックチェーンを採用せず、独自の台帳システムを採用したことによって生じた利点(メリット)と欠点(デメリット)について見ていきましょう。
ブロックチェーンではないことの利点
リップルが「ブロックチェーンではない」からこそ得られた強みもあります。
まずは、送金スピードが圧倒的に速いことと、手数料が非常に低いことです。
他にも省エネ(電力消費が少ない)ことや企業や銀行との親和性が高いこともあります。
また別の観点では、知名度が高いことも、リップルの価値を保持する要因となっています。先行者優位ということです。
ブロックチェーンでないことによる欠点
次に、リップルの欠点について。リップルの持つ欠点は「中央集権的な構造を持っていること」です。
リップルは中央集権的な構造、あるいは少なくともリップル社の影響力が大きいです。
これは一つの仮想通貨としては、見過ごすことのできないポイントです。実際に、ビットコインやイーサリアムのような「非中央集権性(Decentralization)」を理念とする暗号資産支持者からの主な批判の的となっています。
透明性が(ブロックチェーンと比べると)低いこと。
トークンのボラティリティは国際送金における致命的リスク
また、トークンのボラティリティ、つまり価格変動の大きさも大きなリスクです。
「価格変動の幅が大きいのは他の仮想通貨も同じじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし重要なのは、リップルが「国際送金のインフラ」として立ち上がったプロジェクトであるという点です。
国際送金の文脈では、送金金額が確定してから着金までの間に価値が変動することは大きな問題です。
たとえば、1,000万円分の送金をXRPで行い、数分後にXRP価格が5%下落すれば、受取側は950万円分しか受け取れない。
このような価格変動(ボラティリティ)は、個人投資ならまだしも、法人間決済・銀行送金では許容されません。
特に為替や規制を伴うクロスボーダー取引では、「金額の確実性」が最重要です。
リップルの登場はイーサリアムよりも速い
XRP Ledger(リップルの基盤システム)が発表されたのは2012年。イーサリアムよりも3年も早く登場しています。
ちなみにビットコインの登場は2009年、イーサリアムは2015年です。
ステーブルコインの登場
USDC・USDTなどがマルチチェーン展開したことで、イーサリアムやポリゴン上で高速送金が可能になり、チェーン間転送もシームレス化しました。
これは、リップルにとっては好ましくないことだったかもしれません。
なぜなら、国際送金の効率化が必要なだけなら、USDCで良いということになってしまうからです。
国際送金の送金・清算のスピードは今や他チェーンでも実現可能
そして、仮想通貨であるXRPはボラティリティ(価格の変動幅)が大きいです。
→リップルの優位性はステーブルコインで“ほぼ代替可能”。
実際、USDC(Circle)が銀行APIを広げていたり、PayPal USD が国際決済を始めていたりします。
JPMのJPM Coinは法人間決済をすでに商用化しています。
ステーブルコインが価格安定性とスピードを両立し、PolygonやArbitrumなどのチェーンの性能も向上しています。
つまり、リップルの優位性はもはや薄いといえます。
リップルに残された優位性
リップル(XRP)は「中立的通貨」であることくらいでしょう。
法定通貨の裏付けがないデジタル資産=どの国にも属さない
(1) 通貨間ブリッジとしての中立性
(2) 為替リスクを一時的に遮断
(3) 国境を超えた清算レイヤーとしての独立性
これだけで生き残れるでしょうか?
リップルは過大評価されている可能性も否めません。
ステーブルコインはXRPの役割を終わらせるか
リップルは当初の理念や目的からは離れた存在となってしまったことは否めません。
ステーブルコインの登場によって、国際送金というリップルの「存在理由」は消滅(減少)してしまったことは確かです。
現在のところ、仮想通貨トレーダーには相変わらず人気ですが、実用面でいうと、縮小していく可能性が高いでしょう。
しかし、リップルには他にも大きなアドバンテージがあります。歴史の長さ、知名度、そしてテクノロジーの進展です。
現在リップルはXRP以外のプロジェクトに力を入れ、XRPL上で使える「RLUSD」などのステーブルコインのプラットフォームとしての道を切り開いています。
ブロックチェーン技術を使っていないことは不利ですが、それだけで完全にリップルの将来を悲観することでもありません。