タイトル「なぜ銀行より高い?DeFi利回りのヒミツ超入門」が記載されたイラスト。銀行とブロックチェーンが描かれている

DeFi 資産運用

なぜ銀行より高い?DeFi利回りのヒミツ超入門

銀行の定期預金が年0.02%なのに、DeFi(分散型金融)では年20%どころか100%なんて数字を見かける──ワクワクする反面、「本当に大丈夫?」と身構えてしまいますよね。

この記事では ①どうしてそんな高金利が可能なのか ②代表的な稼ぎ方と注意点 ③損をしないための3つの心得 をやさしく解説します。読めば「ウラ側」と「落とし穴」まで丸わかりです。

(読み時間:7〜8分)

どうして銀行より高い?DeFi金利“上乗せ”のワケ

銀行ビルとブロックチェーンが対比されたイラスト

DeFiの高利回りには、従来の銀行にはない構造的な理由があります。大きく分けて以下の3つの要因が、“金利の上乗せ”を可能にしています。

仲介ゼロ → コストゼロ

銀行は、店舗の維持費、人件費、複雑な管理システムなど、多くの「間接コスト」を抱えています。しかし、DeFiはこれらの仲介者を排除し、代わりに「スマートコントラクト」というプログラムが自動で取引や貸し借りを実行します。これにより、中間マージンがほぼゼロになるため、浮いたコストや利益が、より高い利回りとしてユーザーに還元されやすくなるのです。

世界規模で需要が集まる

DeFiの市場は国境がなく、24時間365日稼働しています。世界中の「お金を貸したい人」と「借りたい人」が、たった数クリックでつながることができます。特定の仮想通貨に対する貸付や利用の需要が特定の時期に高まると、市場の原理で金利が一気に跳ね上がることも珍しくありません。このグローバルでリアルタイムな需要と供給のメカニズムが、高利回りにつながることがあります。

「報酬トークン」で利用者を呼びこむ

新しいDeFiサービスやプロトコルは、スタートアップ期に多くの利用者を獲得したいと考えています。

そこで行われるのが、そのプロトコル独自の「ガバナンストークン」などを、サービスを利用したユーザー(例:仮想通貨を預け入れた人)に“お礼”として配布することです。

これらのトークンは、プロトコルが比較的低いコストで発行できるため、気前よく配布される傾向があります。このトークン報酬が加わることで、表面的な年利(APY)が著しく高騰することがあります。

実際にお金が増える“3つの稼ぎ方”

では、具体的にどのような方法でDeFiの利回りを得るのでしょうか?代表的な稼ぎ方を3つご紹介します。

手数料を山分け:流動性提供(LP)

Uniswap(ユニスワップ)やSushiSwap(スシスワップ)などのDEX(分散型取引所)では、ユーザー同士の仮想通貨の交換(スワップ)が行われます。

このスワップをスムーズにするために、ユーザーはペアになる仮想通貨(例:ETHとDAI)をプールに預け入れます。これを「流動性提供」と呼びます。

スワップが行われるたびに手数料が発生し、プールに預け入れた流動性提供者は、その手数料の一部を貢献度に応じて受け取ることができます。言わば“手数料キャッシュバック”のような仕組みです。

コインを貸して利息:レンディング

Aave(アーベ)やCompound(コンパウンド)といったレンディングプラットフォームでは、仮想通貨を借りたい人と貸したい人をマッチングします。

あなたは持っている仮想通貨をプラットフォームに貸し出すことで、借り手が支払う利息を受け取ることができます。銀行預金の仮想通貨版と考えると分かりやすいでしょう。

特定のコインに借り手の需要が集中すると、年利が10%や20%に跳ね上がることも珍しくありません。

新サービス応援でボーナス:イールドファーミング

これは、先述の「報酬トークン」が大きく関わる稼ぎ方です。流動性提供やレンディングといった活動を行ったユーザーに対し、そのプロトコルが独自のガバナンストークンなどを追加で配布する仕組みです。

これは、プロトコルの利用者を増やし、流動性を確保するための“キャンペーン型”のボーナスと考えると良いでしょう。

配布されるトークンの価値が高い場合、利回りが一時的に数百%、数千%になることもありますが、トークン配布が終了したり、多くの参加者が集まりすぎたりすると、利回りが急落する点に注意が必要です。

高利回りの裏に潜む3大リスク

氷山の上が%、下がリスクを示す図

魅力的な高利回りですが、その裏には必ずリスクが潜んでいます。「超入門」だからこそ、甘い言葉だけでなく、厳しい現実も知っておきましょう。

利回りがコロコロ変わるワケ

DeFiの利回りは固定されていません。参加者の増減、市場全体の活況度、預け入れた仮想通貨の価格変動、報酬として受け取るトークンの価格変動など、様々な要因でリアルタイムに変動します。

特に、イールドファーミングの報酬トークンは価格変動が大きいため、表示されている高い年利(APY)がそのまま確定する利益ではないと強く認識しておく必要があります。

インパーマネントロスって何?

流動性提供(LP)特有のリスクです。「インパーマネントロス(Impermanent Loss)」とは、プールに預け入れた仮想通貨の価格が、預け入れ時と比べて大きく変動(特に片方の価格だけが大きく上昇または下落)した場合に発生する損失のことです。

簡単に言うと、「何もしないでただウォレットに保有していた方が、LPプールに預けるよりも価値が減ってしまった」という状態になり得ます。“見た目の手数料収入でプラスになっても、実質的な資産価値はマイナス”という可能性もあります。

ハッキング&ラグプルの現実

DeFiプロトコルはスマートコントラクト上で動作しますが、そのプログラムにバグや脆弱性が見つかり、悪意のある第三者に資金を盗まれてしまうハッキングのリスクがあります。

また、特に新しい無名のプロトコルでは、開発者チームがユーザーから集めた資金を持ち逃げする「ラグプル(Rug Pull)」という詐欺のリスクもゼロではありません。

プロジェクトが信頼できる監査機関による監査を受けているか、コミュニティでの評判はどうかなど、必ず確認が必要です。過去には実際に多額の資金が失われた事件も多数発生しています。

初心者が損をしないための“3つのチェックリスト”

盾のアイコンとチェックリストが並んだ安心感を示すイラスト

DeFiの高利回りへの挑戦は、これらのリスクを理解した上で、慎重に行うことが何より重要です。初心者が最初に取り組む際に損をする可能性を減らすための「3つのチェックリスト」をご紹介します。

安全性チェック

  • 監査レポートの有無と内容確認: 信頼できる監査機関(例:CertiK, PeckShieldなど)によるセキュリティ監査を受けているか? そのレポートは公開されているか? 内容を理解できなくても、監査を受けているという事実は最低限の安心材料になります。
  • TVL(預かり資産残高)が極端に低くないか: TVLはそのプロトコルに預けられている仮想通貨の総額です。あまりにもTVLが低い(できたばかり、または誰も利用していない)プロトコルはリスクが高い可能性があります。有名な、多くの人に利用されているプロトコルから始めるのが無難です。
  • 公式情報とコミュニティの評判: 公式サイトやドキュメント(GitBookなど)はしっかり作られているか? DiscordやX(旧Twitter)などでコミュニティが活発に情報交換しており、ネガティブな情報(ハッキングの噂、運営の不透明さなど)が出ていないか?

余剰資金ルール

なくなっても生活に響かない額だけ」で始める。これがDeFiに限らず、リスクの高い投資全般における大原則です。DeFiは元本が保証されるものではありません。万が一、ハッキングやラグプルで預けた資金がゼロになったとしても、その後の生活に困らない金額からスタートしましょう。

分散ルール

卵を一つのカゴに盛るな、という投資の格言はDeFiでも非常に重要です。

  • サービスを分散: 一つのプロトコルだけでなく、複数の信頼できるDeFiプロトコルに資金を分けて預ける。
  • 通貨を分散: 複数の種類の仮想通貨に分散して預ける。
  • チェーンを分散: Ethereumだけでなく、PolygonやBNB Chainなど、複数のブロックチェーン上のDeFiサービスを利用する。

このように、複数に小分けするだけで、どこか一つで問題が起きても資産全体がゼロになるリスクを大幅に下げることができます。

もし銀行金利がDeFi並みになったら?私たちの未来を大予測

3本の水路からコインが流れ込む図

もし、仮に銀行の定期預金金利がDeFiのように年20%、30%となる世界が来たら、私たちの暮らしや社会はどう変わるのでしょうか?少し「妄想」してみましょう。

家計シミュレーション

例えば、今あなたが100万円を銀行に預けているとします。

もしこれが年20%で運用できたら…単利計算でも5年後には200万円、福利なら約2.5倍の250万円以上になります。

毎月コツコツ積立をする場合でも、その増え方は雪だるま式です。これまでの「貯めるだけでは資産は増えない」という常識が覆り、「貯めるだけで資産形成」が現実的な目標になるかもしれません。老後の資金形成も、今よりずっと楽になる可能性があります。

経済全体へのインパクト

一方で、経済全体には複雑な影響が出そうです。銀行に預けるだけで高金利が得られるなら、人々は消費よりも貯蓄や運用にお金を回すようになるかもしれません。

これにより、個人消費が冷え込む恐れがあります。逆に、低金利で借りて高金利で運用するというアービトラージ(裁定取引)が活発になり、大量の資金が市場に流れ込んでバブルを招く可能性も考えられます。現在の経済の仕組みが大きく揺らぐのは間違いないでしょう。

DeFi利回りの「これから」 税金と規制の動きをチェック

右肩上がりの矢印が描かれた通帳が膨らむコミック風イラスト

DeFiの高利回りは、法整備や税制が追いついていない黎明期だからこそ高い、という側面もあります。今後の税金や規制の動向は、DeFiの利用やすべてのユーザーの手取り利回りに影響を与える可能性があります。

今かかる税金(日本)をサクッと把握

現行の日本の税制では、DeFiの運用で得られた利益(利息、報酬トークンの売却益など)は、原則として給与所得など他の所得と合算される「雑所得」に区分されます。

所得額が増えるほど税率が上がる「累進課税」が適用され、所得税と住民税を合わせると**最大55%**の税金がかかる可能性があります。運用で得た利益を確定申告する必要があります。

今後の税制改正の可能性は?

現在、日本の暗号資産税制に関しては、海外と比べて税率が高いことや、含み益に対する課税の可能性などが課題視されており、税制改正を求める声が多く上がっています。

今後の国会などで、株式などの金融商品と同じように税率を一律20%程度とする「分離課税」への改正案が議論される可能性が報じられています。もし分離課税が実現すれば、特に所得が高い方にとっては、DeFi運用による手取り利回りが大幅に改善されるとの期待が高まっています。

世界の規制が与える影響

DeFiは国境がないため、世界の主要国や地域の規制動向も無視できません。

  • EU: 暗号資産市場規制法(MiCA)により、ステーブルコインの発行上限や準備金などが厳格化されています。2024年末までに完全施行される予定です¹。
  • 米国: 米証券取引委員会(SEC)が、利回り付きステーブルコインの登録例を承認するなど、規制の道筋を示しつつあります²。
  • 取引所の対応: 上記のような規制強化を受け、Coinbaseなどの大手取引所が、規制に準拠しない可能性のある一部ステーブルコインのEU域内での取り扱いを段階的に終了すると発表しています³。

規制が整備されることは、ユーザー保護や市場の健全化につながる一方で、プロトコル側のコスト増や参入障壁の上昇を招き、「安全性アップ⇔利回りダウン」という形で利回りに影響を与える可能性が高いと考えられます。

まとめ

「TAX」と「RULE」の道路標識が分岐点に立つイラスト

DeFiの高い利回りは、従来の金融の「仲介者不在によるコスト削減」と、新しいサービスが利用者を呼び込むための「報酬トークン配布」という、構造的な要因から生まれます。

しかし、それは同時に「利回りが変動する」「インパーマネントロスがある」「ハッキングやラグプルのリスクがある」といった、銀行預金にはない高いリスクを伴います。高リターンと高リスクは表裏一体なのです。

DeFiの高利回りに挑戦する際は、これらのリスクを十分に理解し、「安全性チェック」「余剰資金ルール」「分散ルール」という3つの心得を忘れずに行うことが重要です。

もし興味を持ったなら、いきなり大金を投じるのではなく、まずは信頼できる情報源(公式サイト、有名な解説サイト、大手メディアの解説記事など)でしっかり勉強し、少額から試してみるなど、リスクを限定した形でDeFiの世界に触れてみることをお勧めします。

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