トランプ大統領の肖像と、ステーブルコインとCBDCの違いを解説する日本語タイトル入りバナー

暗号資産(仮想通貨) 経済の基礎知識を解説

トランプ仮想通貨政策の本命?ステーブルコインとCBDCの違いを徹底解説

トランプ大統領は、国家が発行するCBDCではなく、民間発行のステーブルコインを支持するスタンスを明確にしています。

近年、デジタル通貨に関する議論が世界中で活発に行われており、特に、各国が発行を検討する中央銀行デジタル通貨(CBDC)と、民間が発行するステーブルコインが注目を集めています。

しかし米国ではドナルド・トランプ大統領がCBDCに対して強い反対姿勢を示し、ステーブルコインに肯定的な見解を示唆しています。その背景にはどのような米国のデジタル通貨戦略があるのでしょうか?

本記事では、まずステーブルコインとCBDCそれぞれの特徴と違いを整理し、トランプ氏がCBDCに反対しステーブルコインに言及する理由を深掘りします。さらに、米国が国家としてステーブルコインを戦略的に支援する可能性とそのメリット、そして課題について解説し、デジタル時代の米ドルの未来像を探ります。

ステーブルコインとは

基本的な仕組み

ステーブルコインとは、価格の安定を目指して設計された暗号資産の一種です。その価値は、特定の資産(例えば、米ドルやユーロといった法定通貨、金などの商品、あるいは他の暗号資産のバスケット)にペッグ(連動)されるように設計されています。

最も一般的なのは法定通貨担保型で、発行体は発行したステーブルコインと同等額の法定通貨やその等価物(国債など)を準備資産として保有することで、価値の安定を維持しようとします。ステーブルコインの取引はブロックチェーン上で行われるため、比較的低コストかつ迅速な送金や取引が可能になるという特徴があります。

法定通貨との違い

法定通貨は、各国の中央銀行が発行・管理する通貨であり、その価値は国家の信用によって保証されます。物理的な紙幣や硬貨、あるいは銀行のデジタルデータ(預金)として存在します。

一方、ステーブルコインは基本的に民間企業や団体が発行するデジタル資産です。その価値は法定通貨にペッグされますが、ステーブルコイン自体は国家が直接保証するものではなく、発行体の信頼性や準備資産の健全性に依存します。

また、ステーブルコインはブロックチェーン上で発行・流通するため、取引の記録方法やシステムが伝統的な法定通貨のシステムとは異なります。

CBDCとは

基本的な仕組み

CBDC(Central Bank Digital Currency)とは、中央銀行が発行する自国通貨のデジタル形態です。これは、現在流通している現金(物理的な中央銀行の負債)や、商業銀行のデジタル預金(商業銀行の負債)とは異なる、中央銀行に直接請求権を持つデジタルマネーとなることを目指しています。

個人や企業が直接中央銀行に口座を持つ形態(リテール型)や、商業銀行間などの決済に利用される形態(ホールセール型)など、様々な設計が検討されていますが、根幹は「中央銀行が発行するデジタルな法定通貨」であるという点です。

CBDCが各国で検討されている理由

各国がCBDCの発行を検討する背景にはいくつかの理由があります。まず、デジタル化が進む社会において、より効率的で安価な決済システムを提供すること。次に、現金の利用減少に対応し、誰もがアクセスできる決済手段を維持することで金融包摂を促進すること。

また、民間のデジタル通貨(ステーブルコインや既存の電子マネーなど)や他国のCBDCの台頭に対して、自国の通貨主権や金融安定性を維持・強化することも大きな動機です。さらに、金融政策の新たな手段となりうる可能性(例:マイナス金利のより効果的な浸透)も探られています。

ステーブルコインとCBDC(中央銀行デジタル通貨)の違い

ステーブルコインとCBDCは、どちらもデジタルな価値移転手段ですが、その本質には重要な違いがあります。

発行主体:民間か国家か

最も根本的な違いは発行主体です。ステーブルコインは営利企業や非営利団体といった民間組織によって発行・管理されます。一方、CBDCは各国の中央銀行、つまり国家機関によって発行・管理されます。これにより、ガバナンス、信頼の源泉、システム設計思想が大きく異なります。

プライバシーと国家による監視リスク

CBDCは中央銀行が直接取引を管理する設計になりうるため、理論上はすべての取引記録が中央政府によって把握される可能性があります。これは、政府による国民の金融活動の監視や管理強化につながるという懸念を生んでいます。

対照的に、ステーブルコインの取引はパブリックブロックチェーン上では公開されることが多いものの、発行体は民間であり、CBDCのように政府がシステム設計段階から国民の取引を直接監視することを主目的とするものではありません(ただし、規制や法執行を通じて情報は提供され得ます)。

設計思想と自由度

CBDCは公共インフラとしての決済機能や金融政策のツールとしての側面が強く、中央銀行のコントロール下で運用されます。設計次第では、特定の用途に限定されたり、利用額に上限が設けられたり、有効期限が設定されたりする可能性も議論されています。

ステーブルコインは民間サービスとして、より多様な用途(DeFi、ゲーム、国際送金など)での利用を想定して設計されることが多く、利用者の自由度や柔軟性が高い傾向にあります。

金融安定性とシステムへの影響

CBDCが広く普及した場合、商業銀行から中央銀行への預金の大規模な移動(デジタルなBank Run)が発生し、既存の金融システムに不安定性をもたらすリスクが指摘されています。

一方、ステーブルコインは発行体の準備資産の健全性が問われ、準備資産が不足したり、発行体が破綻したりした場合に価値が急落し、利用者に損失をもたらすリスクがあります。

また、巨大なステーブルコインが破綻した場合、金融システム全体に影響を及ぼす可能性も懸念されており、適切な規制による管理が必要です。

トランプ大統領が「ステーブル推し」である理由

トランプ大統領がCBDCに強く反対し、ステーブルコインに対して比較的肯定的な姿勢を示している背景には、いくつかの理由が考えられます。

自由な市場・選択肢の象徴になる

トランプ氏の政治的なスタンスは、「大きな政府」による介入に懐疑的で、個人の自由や市場の選択肢を重視する傾向にあります。

CBDCはまさに国家が直接国民の金融取引を管理する可能性を秘めたシステムであり、彼の支持層が懸念する「政府による管理強化」の象徴となりえます。

これに対し、ステーブルコインは民間が発行するものであり、政府の直接的な管理下に置かれない(少なくともCBDCほどではない)ことから、「自由な市場が生み出す選択肢」として位置づけやすく、彼の政治哲学や支持層へのアピールとして機能します。

米国債を裏付けとする安定コイン経済との親和性

主要な米ドルペッグ型ステーブルコイン(例: USDC, USDT)の発行体は、その準備資産として大量の米国債やコマーシャルペーパーを保有しています。ステーブルコインの普及が進むことは、これらの準備資産への需要を増加させ、間接的に米国債市場を下支えすることになります。

これは、トランプ氏が推進する「アメリカ第一」の経済戦略、特に米国の財政健全化や金融市場の安定にも一定の貢献が期待できる側面があり、彼の経済的な関心とも合致する可能性があります。

暗号資産コミュニティへの歩み寄り

かつては暗号資産に対して懐疑的な姿勢も見せていたトランプ氏ですが、近年は自身のNFTコレクションを発行したり、選挙献金として暗号資産の受付を検討したりするなど、暗号資産コミュニティへの接近が見られます。

ステーブルコインは暗号資産市場において決済や取引の基軸として非常に重要な役割を果たしており、ステーブルコインへの言及は、成長しつつある暗号資産支持層へのアピールとなります。「CBDCは政府の管理ツールだからダメだ。

しかし、暗号資産(そしてその一部であるステーブルコイン)は自由な金融の未来だ。」という対比構造は、特定の支持層に響きやすいメッセージとなります。

アメリカが国家としてステーブルコインを支援する理由

トランプ氏のスタンスだけでなく、より広範な米国の国家戦略として、ステーブルコインを支援・管理しようという動きが見られます。

これは、デジタル時代における米国の経済的・政治的影響力を維持するための重要な手段と考えられているからです。

デジタル時代の米ドルの国際的優位性の維持・強化

グローバルなデジタル経済において、米ドルペッグ型ステーブルコインが広く利用されることは、デジタル時代における米ドルの国際的なプレゼンスを維持・強化する上で非常に効果的です。

他国、特に中国などがデジタル人民元の国際展開を模索する中で、民間主導ながらも米ドルにペッグされたステーブルコインが普及することで、デジタル通貨の世界においても米ドルが基軸通貨としての地位を保ちやすくなります。

グローバル金融システムにおけるリーダーシップの維持

米国の企業が主要なステーブルコインの発行や関連技術開発において中心的な役割を担うことで、米国はデジタル金融の国際的なルール作りや技術標準において主導権を握ることができます。

これにより、世界の金融システムがデジタル化される過程で、米国がその構造や流れに影響力を行使し続けることが可能になります。

政治的・経済的影響力の行使

米国が主要なステーブルコインの発行体に対して規制や法執行を通じて監督権を行使できるようになることで、特定の個人や団体への制裁(ウォレット凍結など)をデジタル通貨の世界でも効果的に実施することが可能になります。

これは、米国の外交・安全保障政策における経済的影響力を維持・強化する上で重要なツールとなり得ます。また、準備資産として米国債が広く保有されることで、米国の金融市場への依存度を高める効果も期待できます。

ステーブルコインをアメリカが国家として支援するメリット

国家がステーブルコインに対して適切な法規制を整備し、支援・管理することで、様々なメリットが期待できます。

法的な立場が明確になる(合法の“準通貨”へ)

規制が整備されることで、ステーブルコインが法的に「合法的なデジタル資産」あるいは決済手段としての「準通貨」として位置づけられます。

これにより、発行体だけでなく、企業や個人、そして伝統的な金融機関も安心してステーブルコインを利用したり、関連ビジネスを展開したりできるようになり、市場全体の信頼性と透明性が向上します。

発行体への監査義務・透明性の向上

法規制によって、ステーブルコインの発行体に対し、準備資産の構成や保管状況に関する定期的な監査や情報開示の義務が課されるようになります。

これにより、準備資産が適切に管理されているかの透明性が高まり、ステーブルコインの信頼性の根幹である「ペッグの安定性」が強化され、利用者の安心感につながります。

利用者保護制度の整備(破綻時対応など)

規制の枠組みの中で、発行体が破綻した場合などに利用者の資産をどのように保護するかといったルールが整備される可能性があります。

預金保険制度のような仕組みの導入や、破綻時の資産返還プロセスの明確化などにより、ユーザーはより安心してステーブルコインを保有・利用できるようになります。

銀行・機関投資家が正式に利用できるようになる

法的な明確さと信頼性の向上により、これまで規制上の不確実性からステーブルコインの利用に慎重だった銀行やヘッジファンド、資産運用会社といった機関投資家が、正式にステーブルコインをビジネスに組み込めるようになります。

これにより、ステーブルコイン市場の流動性が飛躍的に高まり、新たな金融商品の開発やサービス連携が進むことが期待されます。

国際通貨としての米ドルの地位が強化される

(前述の国家戦略と重なりますが、直接的なメリットとして改めて強調)適切な規制のもとで信頼性を得た米ドルペッグ型ステーブルコインがグローバルに普及することで、物理的な米ドルや伝統的な銀行システムに依存しない形での米ドルの利用圏が拡大します。

これにより、国際貿易や送金、デジタル資産取引など様々な場面で米ドルが使われ続け、その国際的な優位性が維持・強化されます。

※表作成の指示がありましたが、この形式では表を作成できません。ステーブルコインとCBDCの比較、あるいは国家支援のメリット・デメリットなどを整理した表を挿入すると、より分かりやすくなります。

ステーブルコインを国家が支援・管理することのデメリット・課題

ステーブルコインの国家支援は多くのメリットをもたらす可能性がある一方で、いくつかのデメリットや課題も伴います。

過度な規制によるイノベーション阻害リスク

国家による規制や管理が過度に厳格すぎると、ステーブルコインの発行体や関連技術を開発する企業の自由な発想や迅速な行動が制限されてしまい、イノベーションが阻害されるリスクがあります。

厳しい規制が、有望なプロジェクトや人材を規制の緩い海外へ流出させてしまう「規制アービトラージ」を引き起こす可能性も否定できません。ステーブルコインの種類やビジネスモデルに応じた、柔軟かつバランスの取れた規制設計が求められます。

準備資産の管理・監督の難しさ

主要なステーブルコインの発行体はグローバルに活動しており、その準備資産は様々な通貨、証券、あるいは他の資産クラスで構成され、世界中の金融機関に分散して保管されている場合があります。

これらの複雑かつ分散した準備資産が、本当に宣伝されている通りに十分に担保されており、リスク管理が適切に行われているかを、単一国家の規制当局が継続的に正確に把握し、監督することは容易ではありません。

国際的な規制協力の必要性

ステーブルコインは国境を越えて瞬時に取引されるグローバルな性質を持っています。そのため、ある一国だけが規制を整備しても、マネーロンダリングやテロ資金供与への利用を防いだり、大規模な発行体の破綻が国際金融システムに与える影響をコントロールしたりするには限界があります。

実効性のある規制体制を構築するには、各国規制当局間の密接な連携と国際的な規制協力枠組みの構築が不可欠ですが、これは調整が難しく時間のかかるプロセスです。

まとめ

本記事では、デジタル通貨の中でも特に注目されているステーブルコインとCBDCに焦点を当て、両者の違いを整理しました。

その上で、なぜトランプ前大統領がCBDCに反対し、ステーブルコインに対して肯定的な姿勢を見せているのかを、彼の政治思想、経済戦略、そして暗号資産コミュニティへのアプローチといった多角的な視点から分析しました。

彼のスタンスは、主に政府による国民の金融活動への過度な管理・監視に対する強い懸念に基づき、民間主導の自由な選択肢としてのステーブルコインを相対的に評価しているものと言えます。

さらに、トランプ氏個人の見解を超えて、米国が国家としてステーブルコインを戦略的に支援・管理しようとする動きの背景にある理由(デジタル時代の米ドルの国際的優位性の維持、グローバル金融システムでのリーダーシップ確保など)と、それが実現した場合の具体的なメリット(法的な明確化、利用者保護、機関投資家参入など)についても解説しました。

一方で、過度な規制によるイノベーション阻害や準備資産監督の難しさ、国際協力の必要性といった課題も存在します。

米国のデジタル通貨の未来は、国家が発行するCBDCが全面的に導入されるよりも、むしろ法的に明確化され、国家によって戦略的に管理・支援された民間発行の米ドルペッグ型ステーブルコインが中心的な役割を果たす方向に向かう可能性が高いと考えられます。

これは、デジタル時代においても米ドルの影響力を維持しつつ、プライバシーや市場の自由といった価値観とのバランスを取ろうとする試みとも言えるでしょう。今後の米国の規制動向や主要なステーブルコインの発展が、世界のデジタル金融システムにどのような影響を与えるか、引き続き注視が必要です。

-暗号資産(仮想通貨), 経済の基礎知識を解説