「S&P500に連動するETF」という言葉をよく耳にするけれど、具体的にどんなものか、投資信託とはどう違うのか、疑問に思っていませんか?S&P500はアメリカの主要企業500社の株価をもとにした重要な指数です。
この記事では、S&P500の基本から、それに連動するETFや投資信託の特徴、そして自分に合った商品の選び方まで、わかりやすく解説していきます。
S&P500とは

正式名称は「Standard & Poor's 500 Stock Index(S&P500種指数)」
S&P500(エスアンドピー500)は、アメリカの株式市場を代表する株価指数のひとつです。格付け会社としても知られるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出し、公表しています。
豆知識 名前の由来
「S&P」という名前は、もともと別々だった2つの会社の名前に由来します。「Standard」は「Standard Statistics(スタンダード・スタティスティクス・ビューロー)」という統計会社、「Poor's」はヘンリー・ヴァーナム・プアー(Henry Varnum Poor)氏が創業した「Poor's Publishing(プアーズ出版)」から来ています。この2社が1941年に合併し、「Standard & Poor's」という社名になりました。
「Poor」は「貧しい」という意味ではなく、創業者プアー氏の姓から取られたものなのです。
主な特徴
S&P500は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やNASDAQ(ナスダック)といったアメリカの主要な証券取引所に上場している、約500社の大型企業の株価をもとに計算される株価指数です。算出方法は「時価総額加重平均」という方式が採用されています。
この指数に採用される企業は、時価総額の大きさ、株式の流動性(売買のしやすさ)、業種のバランスなど、厳しい基準を満たした優良な米国企業に限られます。そのため、S&P500はアメリカの株式市場全体の時価総額の約80%をカバーしており、米国経済の動向を把握する上で非常に重要な指標とされています。
時価総額加重平均型であるため、AppleやMicrosoftといった時価総額が特に大きい企業の株価が上がったり下がったりすると、指数全体に与える影響も大きくなるという特徴があります。
採用基準(一例)
S&P500に採用されるためには、厳しい基準を満たす必要があります。以下は一例です。
- 米国企業であること
- 時価総額が一定基準(例:53億ドルや82億ドル)以上であること
- 市場で売買可能な株式(浮動株)の比率が50%以上であること
- 直近の4四半期(1年間)連続で黒字を計上していること
S&P500に「連動」とは?

投資をする際、「S&P500に投資する」と言うことがありますが、実はS&P500という「指数」そのものを直接買うことはできません。指数はあくまで市場全体の動きを示すための指標だからです。
連動商品の仕組み
では、「S&P500に連動する」とはどういう意味でしょうか?これは、S&P500の値動き(上がったり下がったり)と、ほぼ同じように価格が動くように設計された金融商品(投資信託やETFなど)のことを指します。
例えば、今日S&P500指数が3%上昇したら、それに連動するように作られた投資信託やETFの価格も約3%上昇します。逆に、S&P500指数が3%下落すれば、連動する商品も同じくらい下落するように作られています。
なぜそんなことができるの?
このような連動が可能になる理由は、これらの金融商品が「S&P500に含まれる約500社の株式を、指数における構成比率とほぼ同じ割合で実際に保有している」からです。
例えば、有名なS&P500連動型ETFである「VOO(バンガード S&P 500 ETF)」は、S&P500を構成するAppleやMicrosoft、Amazonといった企業の株式を、指数内での時価総額の比率に合わせて組み入れています。多くの銘柄を指数と同じように保有することで、指数全体の動きとほぼ同じような値動きを実現しているのです。
「セットメニュー」と「お弁当」で例えてみる
S&P500を「アメリカの優良企業500社を集めた豪華なセットメニュー」だと考えてみましょう。レストランで「このセットメニューそのものをください!」とは注文できませんよね。
しかし、その「セットメニューの内容をそっくりそのまま再現したお弁当」を販売しているお店があるとします。これがS&P500に連動するETFや投資信託にあたります。私たちはこの「お弁当」を買うことで、間接的に「セットメニュー」と同じような価値を得ることができる、というわけです。
投資信託とETFの違いをやさしく解説

S&P500のような指数に連動する商品には、主に「投資信託」と「ETF(上場投資信託)」の2種類があります。どちらもS&P500に投資できる点は同じですが、買い方や特徴に違いがあります。
投資信託の特徴(初心者向け)
投資信託の魅力は「自動積立」機能にあります。毎月決まった金額で自動購入できるため、長期的な資産形成に最適です。日本円での取引が基本なので、為替を気にする必要がありません。
さらに、一度設定すれば「放置」可能で、日々の値動きに振り回されることなく投資を続けられます。これは初心者や忙しい方、NISAを活用する方に特に便利です。また、多くの投資信託では得られた分配金が自動的に再投資されるため、複利効果が働き、資産の成長を後押しします。
手間をかけずに長期的な資産形成を目指す方にとって、投資信託は理想的な選択肢と言えるでしょう。
ETFの特徴(中級者向け)
ETFは取引所に上場している投資商品で、株式のように取引時間中ならリアルタイムの価格で売買可能です。価格変動を見ながら最適なタイミングで売買したい積極的な投資家に適しています。
米国ETFを選ぶ場合は米ドル建て取引となるため、為替レートによって円換算の損益が変動します。円安局面での売却は為替差益に、円高時の売却は為替差損につながる可能性があります。
また、ETFの中には定期的に現金分配金を支払うタイプも多く、定期収入を求める投資家の選択肢となります。投資信託との違いは分配金が自動再投資ではなく現金で受け取れる点です。さらに、ETFはNISAの成長投資枠でも購入可能なので、税制優遇も活用できます。
NISAで買えるS&P500連動型ファンド

NISA制度(特につみたて投資枠)を活用してS&P500に投資する場合、低コストな投資信託が人気です。ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
三菱UFJアセットマネジメントが運用する、非常に人気の高い投資信託です。
最大の魅力は、業界最低水準を目指し続ける運用コスト(信託報酬)の低さです(年率0.09372%程度 ※2024年時点)。長期で保有する場合、コストの差はリターンに大きく影響します。
NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方で購入可能です。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」でも上位にランクインする人気のファンドです。特徴は、米国の資産運用大手バンガード社が運用する人気のS&P500 ETF「VOO」に実質的に投資する点です。
信託報酬もeMAXIS Slimと同水準で非常に低く設定されています(年率0.0938%程度 ※2024年時点)。特にSBI証券を利用している投資家に人気があります。
楽天・S&P500インデックス・ファンド
楽天証券ユーザーを中心に人気のあるS&P500連動型投資信託です。以前は「楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)」と並んで、楽天証券の主力ファンドの一つでした。
信託報酬は上記の2つと比較するとやや高めですが(年率0.162%程度 ※2024年時点)、長期の積立投資においては、その差がリターンに与える影響は限定的とも言えます。
結局どれを選べばいい?

S&P500に連動する商品を選ぶ際は、ご自身の投資スタイルや目的に合わせて決めるのが良いでしょう。
初心者・ほったらかし運用したい
投資信託(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)など) がおすすめです。自動積立の設定ができ、売買のタイミングを気にする必要がなく、手間がかかりません。特にNISAのつみたて投資枠を活用したい場合は、投資信託が適しています。
タイミングを見て売買したい
ETF(VOO、IVVなど) が選択肢になります。株式のようにリアルタイムで価格が変動するため、自分の判断で売買タイミングを計りたい経験者向けの選択肢です。ただし、売買には手数料がかかる場合があり、頻繁な取引はコスト増につながる可能性もあります。
NISAで積立したい
投資信託 の方が圧倒的に手軽です。多くの証券会社で積立設定が簡単にでき、分配金も自動で再投資されるタイプが多いため、複利効果も期待しやすいです。ETFもNISA(成長投資枠)で買えますが、積立設定ができない、または設定が煩雑な場合があります。
米ドル資産を持ちたい・配当を受け取りたい
ETF が向いている場合があります。米ドル建てで取引されるため、米ドル資産を保有したい場合に選択肢となります。また、分配金が現金で支払われるタイプを選べば、定期的なキャッシュフローを得ることも可能です。ただし、為替リスクが伴う点には注意が必要です。
よくある勘違い:「ETFの方が儲かる」は誤解

「ETFはリアルタイムで売買できるから投資信託より儲かる」と考える方もいるかもしれませんが、これは一概には言えません。
どちらも同じS&P500指数に連動するように設計されているため、投資対象は実質的に同じです。長期的に見れば、どちらを選んでもリターンに大きな差が出るわけではありません。
ETFの方が売買のタイミングを自分で決められる分、短期的に大きな利益を得るチャンスがあるかもしれませんが、逆にタイミングを誤れば損失が大きくなる可能性もあります。投資信託は基準価額が1日1回しか決まらないため、タイミング売買には向きませんが、それが逆に冷静な長期投資につながるという側面もあります。
重要なのは、自分の投資スタイルやリスク許容度に合った商品を選ぶことです。
まとめ
S&P500は、アメリカの主要企業約500社で構成される重要な株価指数です。この指数に連動する投資商品として、主に「投資信託」と「ETF」があります。
投資信託: 自動積立が可能で手間いらず。初心者や長期でコツコツ積み立てたい人、NISAのつみたて投資枠を活用したい人におすすめ。
ETF: 株式のようにリアルタイムで売買可能。タイミングを見て取引したい人や、米ドル資産を持ちたい人、分配金を現金で受け取りたい人に向いている。
どちらが良いかは投資スタイルによりますが、連動する指数が同じであれば長期的なリターンに大きな差はありません。コストの低さやNISA制度の活用しやすさも考慮して、自分に合った商品を選びましょう。