EigenLayer(エイゲン・レイヤー)」。近年、イーサリアムエコシステムで大きな注目を集めています。
これは既存のステーキング済みのETHをさらに活用する「リステーキング」という画期的な仕組みです。
新たな収益機会やエコシステムの発展が期待される一方、特有のリスクも存在します。
この記事では、EigenLayerとは何か、その核心技術であるリステーキングの仕組み、メリット・デメリット、具体的な使い方、そして将来性まで、初心者にも分かりやすく解説します。次世代のDeFiトレンドを掴みましょう!
Eigen Layer(エイゲン・レイヤー)とは

EigenLayerは、イーサリアムのステーキングメカニズムを拡張する画期的なプロトコルです。
最大の特徴は「リステーキング」と呼ばれる仕組みで、既にステーキングされているETHやLST(リキッドステーキングトークン)の経済的セキュリティを、イーサリアム本体だけでなく、他の様々なアプリケーション(AVS)の保護にも再利用できるようにします。
リステーキング=Ethereumのセキュリティを再利用する仕組み
EigenLayerは、既存のETHステーキングを活用し、他のサービスにもセキュリティを提供する「リステーキング」を可能にします。
通常、ETHをステーキングすると、そのETHはイーサリアムネットワークの安全を守るためにロックされ、報酬が得られます。
リステーキングは、このロックされたETH(またはその代替となるLST)が持つ「信頼」や「経済的な価値」を担保として、さらに別のサービス(AVS)のセキュリティも保証する仕組みです。
これにより、ETHをすでにステーキングしているユーザーが、その資産をいわば二重で活用し、追加の報酬を得る機会が生まれます。
これは、イーサリアムの強固なセキュリティ基盤を、より広範なエコシステムで共有するための革新的なアプローチと言えるでしょう。
「リステーキング」を「乳牛」で例えると

リステーキングは一見難しそうですが、農家と牛の関係にたとえるとイメージしやすいかもしれません。
- 通常のステーキング: 農家が牛(=あなたのステークしたETH)を飼って、毎日搾乳して牛乳(=ステーキング報酬)を得ることだと考えます。
- リステーキング: その元気な牛に、牛乳を搾るだけでなく、追加の仕事として「田んぼを耕す」(=AVSのセキュリティを守る)こともお願いするイメージです。農家は田んぼを耕してもらったお礼として、追加の報酬(=AVSからの報酬)を受け取れます。
つまり、1頭の牛(=1つのステーク資産)で、2つの仕事(=牛乳生産+田んぼ耕し)をこなしてもらうのがリステーキングです。
ただし、働きすぎた牛がケガをしてしまうと、牛乳の生産量も減ってしまう(=スラッシングリスク)ように、リステーキングには追加のリスクもあるという点は覚えておきましょう。
Eigen Layerのメリットと知っておくべきリスク

EigenLayerは魅力的なメリットを提供する一方で、特有のリスクも伴います。
ここでは、ユーザーとプロジェクト(AVS)双方のメリット、そして注意すべきデメリット(リスク)について解説します。
Eigen Layerのメリット
ユーザーにとって最大のメリットは、収益機会の増加です。通常のETHステーキング報酬に加えて、リステーキングを通じてAVSから追加の報酬を得られる可能性があります。
さらに、EigenLayerプロジェクト自体や、関連するAVS、LRTプロトコルからの将来的なエアドロップ(トークン無料配布)への期待も、多くのユーザーにとって大きな魅力となっています。これにより、保有資産の活用効率を最大化できる可能性があります。
プロジェクト側(AVS)にもメリット
EigenLayerは、新しいプロジェクト(AVS)にとっても大きなメリットがあります。
通常、新しいブロックチェーンサービスが自身のセキュリティを確保するには、独自にバリデーター網を構築するなど、莫大なコストと時間がかかります。
しかしEigenLayerを利用すれば、イーサリアムの確立された強固な経済的セキュリティを低コストで「借りる」ことができるため、サービスの開発と普及に集中できます。
Eigen Layerのデメリット(リスク)
EigenLayerの最も注意すべきリスクは、リステーキング特有の**「スラッシングリスク」です。
スラッシングとは、バリデーターが不正行為や怠慢(オフラインなど)を行った場合に課されるペナルティで、ステークされたETHが没収されます。
EigenLayerでは、リステークされたETHがAVSのセキュリティも保証するため、もし利用しているAVS側で問題が発生しスラッシング条件に該当した場合、そのペナルティが元のステーク資産に影響を及ぼす可能性があります。つまり、リスクが積み増しされる形になります。
リキッドリステーキング(LRT)のリスクとは?
LSTやLRTプロトコルを利用して手軽にリステーキングに参加する場合、EigenLayer本体のリスクに加えて、利用するプラットフォーム固有のリスクも考慮する必要があります。
例えば、LRTを発行するプロトコルのスマートコントラクトにバグがあれば、預けた資産が失われる可能性があります。
また、LRTの市場価格が本来の価値から乖離(かいり)するリスクや、プロトコル自体の運営リスクなども存在します。
複数のサービスを組み合わせることで、リスクも複合的になる点に注意が必要です。
参照したCoindesk Japanの記事では、EigenLayerのフェーズ2開始時点でスラッシングや委任機能が未実装である点も報じられており、エコシステム全体がまだ発展途上であることもリスク要因と言えます。)
Eigen Layerの使い方とステーキング方法

ここでは「Eigen Layerの使い方とステーキング方法」について、特にLST(リキッドステーキングトークン)を利用した、比較的手軽な参加方法を中心に初心者にもわかりやすい形で解説します。
本来、イーサリアム(ETH)を正規にステーキングするには、32ETH以上というかなりの高額のEHTをステーキングする必要があります。
しかしEigenLayerでは、よりすくないトークン保有でもステーキングが可能になります(リステーキング)。
①LSTを用意する
リステーキングを行うには、LST(リキッドステーキングトークン)を保有している必要があります。
LSTは、ステーキングされたETHの「預かり証」のようなもので、Lidoの「stETH」、Rocket Poolの「rETH」、Coinbaseの「cbETH」などが代表的です。
これらは、各リキッドステーキングサービスでETHをステーキングすることで入手できるほか、Uniswapなどの分散型取引所(DEX)で購入することも可能です。少額からでも始められます。
②Eigen Layer対応のプラットフォームにアクセス
LSTが用意できたら、次にEigenLayerのリステーキングに対応したプラットフォームにアクセスします。
EigenLayerの公式サイト自体にLSTを直接デポジット(預け入れ)する機能があります。
また、後述するLRT(リキッドリステーキングトークン)プロトコル(Ether.fi, Renzoなど)を利用することも一般的です。どちらの場合も、ウェブサイトにアクセスし、MetaMaskなどの暗号資産ウォレットを接続する必要があります。
③リステーキング設定を行う
ウォレットを接続したら、リステーキングしたいLSTの種類と数量を選択します。
EigenLayer公式サイトに直接デポジットする場合、現時点(2025年4月)では、預け入れたLSTはEigenLayerのセキュリティプール全体に貢献する形になります。(将来的には特定のAVSを選択して委任する機能が実装される予定です)。
LRTプロトコルを利用する場合は、各サービスの指示に従ってETHまたはLSTを預け入れ、代わりにそのプロトコル独自のLRTを受け取ります。
いずれの場合も、トランザクションの内容をよく確認し、ウォレットで承認・実行すればリステーキング(またはLRTの取得)が完了します。
代表的なLRTプロトコル

EigenLayerへのリステーキングをより手軽にし、さらに流動性も提供するのがLRT(リキッドリステーキングトークン)プロトコルです。
ユーザーはETHやLSTをこれらのプロトコルに預け、代わりにLRTを受け取ります。ここでは代表的なLRTプロトコルを紹介します。
以下のプロトコルはAVSではなく、EigenLayerのリステーキングを仲介するLRTプロトコルです
Ether.fi
Ether.fiは、ユーザーが自身の秘密鍵を管理できるノンカストディアル型のリキッドステーキング/リステーキングプロトコルです。
ユーザーはETHを預け入れると、リステーキングされたETHを表すLRT「eETH」を受け取れます。
このeETHは他のDeFiプロトコルでさらに活用可能です。EigenLayerとの統合により、ステーキング報酬とリステーキング報酬(EigenLayerポイント含む)の両方を狙える点が特徴です。初期のエアドロップキャンペーンも注目を集めました。
Renzo
Renzoは「EigenLayer Strategy Manager」として、EigenLayerエコシステムへのアクセスを簡素化することを目指すプロトコルです。
ETHやLSTを預けると、LRTである「ezETH」が発行されます。Renzoは、ユーザーに代わって最適なAVS選択戦略などを管理し、リステーキングのリスクとリターンのバランスを取ることを目指しています。
シンプルな操作性とEigenLayerへの最適化を特徴とし、こちらもポイントプログラムなどを通じてユーザーを集めています。
Puffer Finance
Puffer Financeは、特にバリデーターの分散化とセキュリティに重点を置いたリキッドステーキング/リステーキングプロトコルです。
独自技術「Secure-Signer」により、ノード運用者のスラッシングリスクを低減することを目指しています。
ユーザーはETHを預けてLRT「pufETH」を受け取ります。安全性を高めつつEigenLayerのリステーキングに参加できる点が特徴で、小規模なノード運用者でも参加しやすい設計思想がコミュニティから支持されています。
Eigen Layerの将来性とトークン価格は?

EigenLayerは、イーサリアムエコシステムの新たな可能性を切り開くプロジェクトとして大きな期待が寄せられています。
その将来性を占う上で、TVLの急増やAVSエコシステムの拡大、そして独自トークン$EIGEN(現在はまだ譲渡不可)の動向が重要なポイントとなります。
ここでは、EigenLayerの現状と今後の展望について解説します。 (注: トークン価格は変動するため、本記事では具体的な価格予測は行いません)
大規模なTVL(Total Value Locked)
EigenLayerの注目度を示す指標の一つが、TVL(Total Value Locked:預かり資産総額)の急増です。
DefiLlamaなどのデータによると、EigenLayerにはサービス開始から短期間で莫大な資金が集まり、2024年の時点で既に150億ドルを超える規模に達していました。
これは、多くのユーザーが保有するETHやLST(LidoのstETH、Rocket PoolのrETHなど)をEigenLayerにリステーキングしていることを示しています。
この急速な資金流入の背景には、EigenLayerが提供するリステーキングの将来性への期待に加え、プロジェクトや関連サービスからの将来的な独自トークン($EIGENなど)のエアドロップ(無料配布)への強い期待があります。
多くのユーザーがEigenLayerポイントを貯めることで、エアドロップの対象となることを期待して資金を預け入れている状況です。
AVS(Actively Validated Services)の登場
EigenLayerの価値は、そのセキュリティを利用するAVS(Actively Validated Services)がどれだけ登場し、実際に活用されるかにかかっています。
既に多くのAVSがEigenLayerエコシステムに参加し、稼働を開始しています。
これらは、データ可用性、分散シーケンサー、オラクル、ブリッジ、高速ファイナリティレイヤーなど、イーサリアムエコシステムの様々な課題解決に貢献することが期待されています。
その他
代表的なAVSの例としては以下のようなものがあります。
- EigenDA: EigenLayer自身が開発するデータ可用性レイヤー。Rollupのデータ保存コストを大幅に削減する可能性。
- AltLayer: Rollup向けの高速ファイナリティを提供するサービス。
- Omni Network: 異なるRollup間を安全に接続する相互運用性ネットワーク。
- Lagrange: Optimistic Rollup向けのセキュアなライトクライアントを構築。
- Near: 高速ファイナリティレイヤーを提供。
- Espresso: 分散型シーケンサーネットワークを構築。
これらのAVSが実際に普及し、EigenLayerの共有セキュリティの恩恵を受けることで、イーサリアムエコシステム全体の開発が加速することが期待されます。
EigenLayerのリステーキングは、もはや理論だけでなく、具体的なユースケースを生み出し始めているのです。今後のAVSの増加と成功が、EigenLayerの将来性を左右する鍵となるでしょう。
まとめ
EigenLayerは、「リステーキング」という革新的な仕組みを通じて、イーサリアムのセキュリティを様々なアプリケーションで共有可能にする注目のプロジェクトです。
ユーザーにとっては追加報酬やエアドロップの機会がある一方、スラッシングリスクや利用するプラットフォーム(LRTなど)のリスクも存在します。
特にLSTやLRTプロトコルを利用すれば、少額からでも参加可能です。EigenLayerエコシステムはまだ発展途上ですが、多くのAVSが登場し、TVLも急増しており、イーサリアムの未来に大きな影響を与える可能性を秘めています。
今後も最新情報に注意し、リスクを理解した上で関わっていくことが重要です。