「令和版ブラックマンデー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
2025年現在、世界経済や金融市場には不確実性が漂っており、歴史的な株価暴落である「ブラックマンデー」を想起させ、今後の市場動向を懸念する声も聞かれます。果たして、令和の時代にブラックマンデー級の暴落は起こりうるのでしょうか?
本記事では、まずブラックマンデーとは何だったのかを振り返り、現在の市場状況と比較しながら、将来の可能性や、そうした状況に備えて投資家がどう行動すべきかについて解説します。
ブラックマンデーとは

ブラックマンデーとは、1987年10月19日月曜日に発生した、世界的な株価の大暴落です。この出来事は、多くの投資家や市場関係者に強いインパクトを与えました。
なにが、どれくらい下がったか
ブラックマンデーで最も注目されたのは、ニューヨーク株式市場です。ダウ工業株30種平均は、この一日でなんと約22.6%という史上最大の下げ幅を記録しました。こ
れは金額にして約5,000億ドルの時価総額が吹き飛んだ計算になります。暴落はニューヨーク市場に留まらず、東京、ロンドン、香港など、世界中の主要な株式市場に瞬く間に波及し、連鎖的な株価下落を引き起こしました。
これほど短期間に、世界の主要市場が同時に大幅下落するという事態は前例がなく、多くの人々に衝撃を与えました。
期間(どのくらい下がり続けて、回復にどれくらいかかったか)
ブラックマンデーと呼ばれる暴落自体は、1987年10月19日のわずか一日で集中的に発生しました。
しかし、市場の混乱や大幅な価格変動はその後数日間続きました。市場の底入れまでにはある程度の時間を要しましたが、その後の回復は比較的早く、主要市場の多くは1年〜1年半程度で暴落前の水準を取り戻しました。
ただし、市場や銘柄によっては回復にさらに時間がかかったケースもあります。この急速な下落と比較的速い回復のパターンも、ブラックマンデーの特徴の一つと言えます。
2025年の暴落はブラックマンデー並みか

2025年現在、市場には警戒感があるものの、実際にブラックマンデー級の暴落が既に起きているわけではありません。現在の状況を1987年当時と比較してみましょう。
まだBM(ブラックマンデー)ほどではない
2025年4月現在、世界の主要な株価指数は確かに変動を繰り返していますが、1987年のブラックマンデー直前に見られたような極端な過熱感や、一日で2割以上も暴落するという規模の下げは起きていません。当
時の市場は、急激な株価上昇とその反動への警戒感が高まっており、それが一気に噴出した側面があります。現在の市場も不確実性はありますが、当時の状況とはいくつかの点で異なっています。
ブラックマンデー発生時との具体的な違い
1987年のブラックマンデー当時と2025年現在では、金融市場を取り巻く環境が大きく異なります。
まず、情報伝達のスピードが格段に上がりました。当時は電話やテレックスが中心でしたが、現在はインターネットを通じて情報が瞬時に世界中を駆け巡ります。
また、金融規制も強化され、市場の安定化を図るためのセーフティネット(サーキットブレーカーなど)も整備されています。中央銀行の危機対応能力や、国際的な連携体制も当時より進んでいます。
さらに、取引手法も多様化し、アルゴリズム取引や高頻度取引が主流になっていますが、これが暴落を加速させるか、あるいは緩和するかに働くかは状況によります。これらの違いが、当時と同じ規模や速度の暴落が起こる可能性を低くしているという見方があります。
令和のブラックマンデーはいつ起きる?
「令和のブラックマンデー」が「いつ」起きるのか、あるいはそもそも起きるのかどうかを正確に予測することは、誰にもできません。市場の暴落は、予測不可能な複数の要因が複合的に絡み合って発生することがほとんどだからです。
しかし、経済のサイクルや金融市場が抱える潜在的なリスク要因から、専門家の間では警戒が必要とされる時期について議論されることがあります。
例えば、金融引き締めの長期化による影響、景気後退の本格化、予期せぬ地政学的なイベントなどが、市場のセンチメントを悪化させる引き金となりうる可能性が指摘されています。いつ来るかは不確実ですが、常に市場の変動リスクは存在するという認識を持つことが重要です。
今後ブラックマンデー並みの暴落に発展する可能性

現在の市場状況がブラックマンデーほどではないとしても、今後、暴落に発展するリスクはゼロではありません。いくつかの潜在的な要因が指摘されています。
景気後退の確率は60%?
2025年現在、世界経済の先行きに対する不透明感は依然として高く、主要国の景気後退リスクが意識されています。
一部のエコノミストや調査機関は、今後1年程度で景気後退に陥る確率を比較的高く見積もっており、報道によっては「景気後退の確率は60%」といった見出しが踊ることもあります。
景気後退は企業の業績悪化につながり、それが株価の下落を招く主要な要因の一つとなります。もし景気後退が現実のものとなれば、市場全体が大きく冷え込む可能性があります。
現在の金融市場における潜在的なリスク要因
景気後退リスクに加え、現在の金融市場はブラックマンデー級の暴落につながりかねない複数の潜在的なリスク要因を抱えています。
例えば、長期間にわたる低金利環境下で積み上がった債務問題や、特定のセクター(例えば、AI関連や一部のテクノロジー株など)における過熱感、不動産市場の調整リスクなどが挙げられます。また、地政学的な緊張(ウクライナ情勢や中東情勢など)が予期せぬ形で金融市場に波及するリスクも常に存在します。
さらに、進化する金融技術の裏側にあるシステムの脆弱性や、中央銀行がインフレ抑制と景気下支えの間の難しい舵取りを迫られる中で、政策の限界が見え隠れするような状況も、市場の不安定要因となりえます。
これらのリスク要因が複合的に作用し、市場参加者の信頼が一気に失われるような事態になれば、大規模な株価下落に発展する可能性は否定できません。
過去の暴落データからわかること

過去の歴史的な暴落事例を振り返ることは、現在の状況を理解し、今後の市場変動に備える上で貴重な教訓を与えてくれます。
大恐慌(1929年〜)
1929年に始まった世界大恐慌は、株式市場の暴落が実体経済に深刻な影響を与え、長期にわたる不況を招いた最悪の事例です。この教訓は、金融システムの脆弱性が経済全体を揺るがすこと、そして政府や中央銀行による適切な政策対応の遅れが事態を悪化させることを示しました。
ITバブル崩壊(2000年前後)
2000年頃に発生したITバブル崩壊は、インターネット関連企業への過剰な期待から株価が異常に高騰し、その後一気に崩壊した事例です。
特定のセクターへの集中投資や、根拠のない熱狂が市場を歪める危険性を示しました。実体経済への影響は限定的でしたが、投資家には大きな損失をもたらしました。
リーマンショック(2008年)
2008年のリーマン・ブラザーズ破綻に端を発した世界金融危機(リーマンショック)は、サブプライムローン問題に端を発した金融商品の複雑化と、金融機関間の相互依存性の高さが、金融システム全体の信用収縮を引き起こした事例です。
金融機関の破綻が連鎖し、世界的な景気後退を招きました。この経験から、金融システムの安定化と、リスクの高い金融商品に対する規制の重要性が改めて認識されました。
これらの過去の事例からわかるのは、暴落のトリガーやメカニズムは様々であるものの、市場の過熱、過剰なリスクテイク、そして何らかのきっかけによる市場参加者の信頼の失墜が共通点として挙げられることです。
何をすべき?ブラックマンデーの可能性がある今

「令和のブラックマンデー」が来るかどうかは分かりませんが、市場の変動リスクが高まっている2025年現在、投資家として備えておくべき心構えと具体的な行動について考えます。
①しばらくは静観(何もしない)
市場が大きく変動し、不確実性が高い局面では、焦って売買をする必要はありません。特に長期的な視点で投資を行っている場合、一時的な株価の下落はポートフォリオ全体から見ればノイズである可能性もあります。
感情的な判断で安易に売却するのではなく、まずは冷静に状況を観察し、自身の投資計画を見直す時間を持つことが重要です。何もしないという選択肢も、リスク管理においては有効な戦略の一つです。
②機動的にポートフォリオ再構築
市場環境の変化や自身の年齢、リスク許容度に合わせて、資産配分を見直すことは常に重要です。
もし現在のポートフォリオがリスクを取りすぎていると感じるなら、株式の比率を減らし、比較的安全とされる債券や現金の比率を上げることも検討できます。
特定の資産や地域に集中しすぎている場合は、分散投資を徹底することでリスクを軽減できます。市場の状況に応じて、機動的にポートフォリオを調整する準備をしておくことが望ましいでしょう。
③早期回復を見越して「買い増し」
過去の暴落事例を見ると、市場はいつか回復するという歴史があります。もし暴落が起きた場合、それは優良な資産を割安な価格で手に入れる絶好の機会となる可能性もあります。
市場の早期回復を予測し、下落局面で積極的に「買い増し」を行うという戦略も考えられます。
ただし、これは市場の底を見極めるのが非常に難しく、さらなる下落リスクも伴うため、十分な資金的余裕があり、高いリスクを許容できる場合に検討すべき戦略です。
ブラックマンデー並みの暴落時に「やってはいけないこと」

もしブラックマンデー級の暴落が起きてしまった場合、パニックに陥りやすい状況だからこそ、冷静さを保ち、避けるべき行動があります。
狼狽売り
市場が急落すると、多くの投資家が不安になり、「これ以上損をしたくない」という気持ちから保有資産を投げ売りに走りがちです。
これが「狼狽売り」です。狼狽売りは、一時的な含み損を確定させてしまい、市場が回復した際にその後の上昇の恩恵を受けられなくなる可能性があります。感情的な判断ではなく、事前に立てた投資計画に基づいて行動することが極めて重要です。
根拠のない情報や噂に流される
暴落のような混乱時には、SNSやインターネット上には不確実な情報やデマが飛び交いがちです。
そうした根拠のない情報に惑わされて、誤った投資判断を下してしまうことは非常に危険です。
信頼できる報道機関や専門家の情報、ご自身で収集したデータに基づいて、冷静に状況を判断するように努めてください。感情的にならず、事実に基づいた情報収集と分析が求められます。
過度な信用取引やレバレッジのかかった投資
市場が急落する局面で、損失を取り返そうと焦り、借入金を使った信用取引や、レバレッジをかけたデリバティブ取引などに手を出すことは絶対に避けるべきです。暴落時は価格変動が激しく、想定以上の損失が瞬時に発生する可能性があります。
信用取引では、含み損が拡大すると追加の証拠金(追証)を求められるリスクが高まり、最悪の場合は強制決済されて大きな損失を被ることになります。
自身の資金力やリスク許容度をはるかに超えた投資は、市場の退場を余儀なくされることにもつながりかねません。短期的な感情に流されず、無理のない範囲での投資を心がけてください。
まとめ
「令和のブラックマンデー」が「いつ」起きるのか、あるいは本当にブラックマンデー級の暴落が起きるのかどうかは、2025年4月現在、誰にも断定できません。しかし、世界経済や金融市場には依然として多くの不確実性が存在し、過去の事例から学ぶべき点は多々あります。
ブラックマンデーや過去の様々な暴落事例が示すのは、市場には予測不能な変動リスクが常に存在するという事実です。重要なのは、こうしたリスクを過度に恐れるのではなく、可能性として理解し、適切に備えておくことです。
過去の暴落から得られる教訓は、市場の過熱や過剰なリスクテイクの危険性、そして何よりも冷静な判断とリスク管理の重要性です。
もし万が一、市場が大きく下落するような局面を迎えたとしても、感情的な「狼狽売り」を避け、根拠のない情報に惑わされず、自身の長期的な投資計画に基づいた行動をとることが、資産を守り、将来の市場回復の恩恵を受けるための鍵となります。
2025年という節目において、改めてご自身の投資ポートフォリオやリスク許容度を見直し、来るかもしれない市場変動に備えておくことが賢明と言えるでしょう。